平成30年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [意匠]

平成30年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [意匠]

【問題Ⅰ】

意匠法において、一つの意匠として認められるものを、意匠法第2条その他の関係する 条文に照らして説明せよ。 ただし、いわゆる画像意匠には言及しないものとする。 【40点】

解答例

1. 意匠について

 意匠とは、物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう(2条1項)
 物品とは、有体物、定形性、取引性を有するものである。有体物とは動産であり、不動産である建物や神社は該当しない。定形性とは個体物をいい、液体などの形の変わるものは該当しない。

2. 部分意匠について

 意匠の部分についても、部分意匠として一つの意匠として認められる(2条1項かっこ書き)。具体的には、1.意匠法の対象とする物品と認められ、2.当該物品全体の形態の中で一定の範囲を占める部分であり、3.当該物品において、他の意匠と対比する際に対象となりえる部分である。
 部分意匠は、それ単体で取引性を有していないため、一つの意匠とは認められていなかった。

  • しかし、独創的なデザインの部分を有する意匠が存在するところ、その部分を模倣する意匠について権利行使することができないという問題があった。
  • しかし、独創的で特徴のある部分を取り入れつつ意匠全体で侵害を避ける巧妙な模倣が増加し、十分にその投資を保護することができないものとなっていた(青本 2条)

 そこで、そのような模倣に対する対抗措置として、意匠の部分についても一つの意匠とし、保護対象となるように規定することとした。

3. 組物の意匠について

 同時に使用される二以上の物品であっても、要件を満たすことで、一つの意匠として認められる(8条)
 「システムデザイン」や「セットもののデザイン」がデザイン創作活動の実態としてよく見られるようになってきていたことを踏まえ、産業活動の実態に合わせそれらを適切に保護するために規定することとした(青本 8条)。  組物の意匠として認められるためには、その物品は、経済産業省令で定めるものに限定されている。また、組物全体として統一がある必要がある。組物全体として統一があると認められる類型として、1.構成物品の形態が、同じような造形処理で表されていることにより統一があること、2.全体として一つのまとまった形状又は模様を表すことにより統一があること、3.物品の形態により物語性などが観念的に関連がある印象を与えることにより統一があること、が挙げられる。

4. 動的意匠について

 動的意匠とは、意匠に係る物品の形態がその物品の有する機能に基づき変化する意匠である(6条4項)
 形状が変化する意匠があるところ、その形状の異なる状態ごとに意匠登録を受けるために出願することは煩わしい。
 そのため、そのように変化する意匠を一つの意匠と認めるよう規定している(青本 6条4項)