令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 意匠 1~3

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【意匠】1

意匠法における意匠に関し、次の(イ)~(ニ)のうち、正しいものは、いくつあるか。

(イ)

縁(ふち)に模様が施された茶碗について、意匠に係る物品を「茶碗の縁」として意 匠登録を受けることができる。

×

  • 意匠に係る物品は、それのみで通常の取引状態において独立の製品として取り引きされるものである必要があるところ、「茶碗の縁」はそれ単体で取引の対象とならないため、意匠に係る物品とならず、意匠登録を受けることができない(3条1項柱書、意匠審査基準H29年改正 21.1.1.1.(2)④)

(ロ)

タオルをバラの花に似せて折り畳んだ形状は、意匠に係る物品「タオル」の意匠とし て意匠登録を受けることができる。

×

  • 意匠は、物品の形態であることから、物品自体の形態と認められないものは、意匠とは認められないところ、タオルをバラの花に似せて折り畳んだ形状は、物品「タオル」の本来の形状でないため、意匠として認められず、意匠登録を受けることができない(3条1項柱書、意匠審査基準 H29改正 21.1.1.2(2))

(ハ)

電波受信機能付き置き時計の内部構造で、分解しなければ視認できないアンテナの形 状は、意匠に係る物品「置き時計」の部分として意匠登録を受けることができない。

  • 意匠とは視覚を通じて美感を起こさせるものであるところ(2条1項)、分解しなければ視認できないものは、意匠として認められない。

(ニ)

その大きさが、縦0.4 ミリメートル、横3ミリメートル、厚さ0.1 ミリメートルであ って、肉眼によっては細部を認識できない電気接続端子の形状、模様若しくは色彩又は これらの結合について、意匠登録を受けることができる場合はない。

×

  • 取引時に拡大鏡等により形状を拡大して観察することが通常である場合、必ずしも肉眼により認識することができる必要はなくても、「視覚を通じて美感を起こさせるもの」に当たると解する。``(3条1項柱書、平成17年(行ケ)第10679号審決取消請求事件)""
  • 審査基準に記載していない。探すのが大変だった。試験として出したのだから、審査基準に加えてくれてもいいと思う。

【意匠】2

秘密意匠に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

甲は、意匠イについて意匠登録出願Aをした。甲は、出願Aの出願と同時に意匠イを 秘密にすることを請求しなかったが、出願後に秘密にすることを希望する場合には、出 願Aの登録料の納付時までいつでも、秘密にすることを請求できる。

×

  • 出願と同時に、又は第1年分の登録料の納付と同時に請求することができる(14条2項)
  • 登録料の納付時までいつでも請求することができるわけではない。

秘密にすることを請求した意匠について、意匠権の設定の登録があったときに発行さ れる意匠公報であって、秘密にすることを請求する期間が経過する前に発行される意匠 公報には、意匠権者の氏名又は名称及び住所又は居所、意匠登録出願の番号及び年月日、 登録番号及び設定の登録の年月日、願書に記載された意匠に係る物品が掲載される。

×

  • 秘密意匠の場合、願書、及び願書に添付された書面は掲載されない(20条4項、20条3項4号)
  • そのため、願書に記載された意匠に係る物品(6条1項3号)は、掲載されない。
  • 願書の記載事項である、出願人、及び創作者(6条1項1号、2号)も、掲載されない。

甲は、3年の期間を指定して秘密にすることを請求した意匠について意匠登録を受け た。甲は、秘密の期間が残り1年を切った時点で、秘密の期間を1年間延長することを 請求できる。

×

  • 秘密にできる期間は、意匠登録を受けた時 意匠権の設定の登録の日から3年の期間である(14条1項)
  • 3年間の期間を指定しているため、それ以上の延長はすることができない。

特許庁長官は、裁判所から請求があったときであっても、秘密にすることを請求され た意匠について、その意匠権者の承諾を得なければ、裁判所に示すことができない。

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  • 特許庁長官は、意匠権者の承諾を得ることなく、裁判所に示す(14条4項3号)
  • その後、意匠権者に、そのことを通知する。 その後、意匠権者に通知することはない。規定にない。
  • 14条4項以外に、何人も、特許庁長官に対し、秘密意匠に関する書類の交付を請求することができる(63条1項2号)
  • 特許庁長官は、必要があると認めるときは、請求を認めない(同項柱書の但書き)
  • 特許庁長官は、請求を認めるときは、その書類を提出した者にその旨、及びその理由を通知する(同条2項)
  • 特許庁長官が、意匠権者の承諾を得て、秘密意匠に関する書類を提示することはない。

ハーグ協定のジュネーブ改正協定に規定する国際意匠登録出願の出願人は、その意匠 を我が国における秘密意匠(意匠法第14 条)とすることを、請求することができない。

  • 国際意匠登録出願において、秘密意匠は準用されていない(60条の9)

【意匠】3

意匠法に規定する登録要件に関し、次のうち、誤っているものは、どれか。なお、各設 問で言及した条文の該当性のみを判断し、他の登録要件は考慮しないこととする。 また、特に文中に示した場合を除き、意匠登録出願は、いかなる優先権の主張も伴わず、 秘密意匠に係るものでも、分割又は変更に係るものでも、補正後の意匠についての新出願 でも、冒認の出願でもなく、かつ、放棄、取下げ又は却下されておらず、査定又は審決が 確定しておらず、いかなる補正もされていないものとし、また、名義変更、秘密にする期 間の変更は行わないものとし、ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく特例を考慮しな いものとする。

甲は、受信用の反射鏡に支持具を取り付けた「パラボラアンテナ」の意匠イを創作し て、意匠イの全体意匠と、意匠イの「反射鏡の部分」のみを「意匠登録を受けようとす る部分」とした部分意匠「パラボラアンテナ」の意匠ロを出願した。意匠ロは「技術的 な機能を確保するために必然的に定まる形状である」とされ、その出願は、意匠法第5 条の規定により拒絶された。この場合、意匠イに係る出願は、意匠法第5条の規定に該 当することを理由としては拒絶されないことがある。

×

  • 「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠」は、意匠登録を受けることができない(5条3号)
  • ここで、意匠イは反射鏡及び支持具からなるものであり、物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなるものでないので、意匠登録を受けることができる場合もある。
  • 5条3号に該当するためには、形状のみからなる必要がある。

甲が、「のこぎり」の意匠イについて意匠登録出願Aをした後に、乙は意匠イの「の こぎり」を構成する「のこぎりの柄」に類似する「のこぎりの柄」の意匠ロについて意 匠登録出願Bをした。その後、意匠イについて意匠権の設定の登録がされた。この場合、 意匠ロの出願Bは、意匠イの存在を理由に、意匠法第3条の2の規定に該当するとして 拒絶される。

  • 3条の2の規定通り。

甲及び乙が共同で「カメラ」の意匠イについて意匠登録出願Aをした後に、甲は単独 で意匠イのカメラに取付けられた「レンズ」の意匠に類似する「レンズ」の意匠ロにつ いて意匠登録出願Bをした。その後、意匠イについて意匠権の設定の登録がされた。こ の場合、意匠ロの出願Bについて出願人名義変更をして甲及び乙の共同の出願としなく ても、意匠法第3条の2の規定に該当することを理由としては拒絶されることはない。

×

×

  • 共同の出願としなくても、出願後、査定謄本の送達時又は拒絶理由の通知時までに、共同出願となるように届け出をすれば、拒絶されることはない。
  • 3条の2の規定により拒絶されるらしい。

甲が、「腕時計のバンド」の意匠イについて、意匠登録出願Aをした後に、乙は意匠 イに類似する「腕時計のバンド」を時計本体に組み込んだ「腕時計」の意匠ロについて 意匠登録出願Bをした。その後、意匠イについて意匠権の設定の登録がされた。出願B は意匠イの存在を理由に、意匠法第3条の2の規定により拒絶されることはない。

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  • 出願Bの意匠ロは、先の出願Aの意匠イの一部ではないため、3条の2の規定により拒絶されることはない(3条の2)

甲は、「鍋ぶた」をデパートで販売した。その後、乙は甲の「鍋ぶた」に取り付けら れている「摘み(つまみ)」に類似する「摘み」の意匠イを創作し、意匠イについて「鍋 ぶたの摘み」の意匠登録出願Aをした。この場合、出願Aは、甲が「鍋ぶた」を販売し た事実を理由に、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するとして拒絶される。

×

  • 出願Aの物品は「摘み」であるため、公知の「鍋ぶた」の部品である「摘み」に類似いていることをもって、3条1項3号で拒絶されない。
  • 3条2項により、拒絶される。
  • 3条1項3号により、拒絶されるらしい。