平成28年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [意匠]

平成28年度弁理士試験論文式筆記試験問題[意匠]

【問題Ⅰ】

 甲は、全体形状が斬新な飲料用のPETボトル(容器)を創作した。この容器の胴部は、 手で掴んだ際に変形しないよう工夫された特徴的な凹凸形状を備えている。甲は、凸部の 配置が若干異なる別の容器も創作している。甲は、これら2種類の容器の製造販売を2年 後に予定しており、それまでは非公開にしたいと考えている。甲より相談を受けた弁理士 乙は、これらの容器について特許権による保護も可能であるが、意匠権による保護を提案 することにした。
 上記事例において、甲の創作対象が特許権意匠権の双方で保護され得る理由を簡潔に 述べよ。また、甲の創作対象は意匠法によりどのような態様で保護されるか、考えられる 態様を列挙し、弁理士乙が甲に説明すべき各態様のメリットとデメリットを簡潔に述べよ。 【50点】

解答例

1. 特許権及び意匠権で保護される理由

 技術的思想の創作は特許発明として保護される(2条1項、2項)。手でつかんだ際に変形しないよう工夫された特徴的な凹凸形状は技術的思想の創作といえるため、特許発明として保護される。また、物品や物品の部分の形状、模様、若しくは色彩又はこれらの結合について登録意匠として保護される(2条1項かっこ書き)。PETボトルについて、斬新な全体形状や、特徴的な凹凸形状は意匠であるため、登録師匠として保護される。

2. 意匠法による保護の態様

(1) 通常の意匠

 物品「容器」、斬新な全体形状を登録意匠として保護することができる(2条1項)
 メリットとして、当該意匠と同一又は類似の意匠について独占排他権を得ることができる。
 デメリットとして、特徴的な凹凸形状の部分が他の物品で模倣された場合に、適切に保護することができない。

(2) 部分意匠

 物品「容器」、特徴的な凹凸形状を部分意匠として保護することができる(2条1項かっこ書き)
 メリットとして、特徴的な凹凸形状の部分を取り入れ、かつ全体としては甲が創作した意匠と類似していない巧妙な模倣に対し、権利行使をすることができる。
 デメリットとして、凸部の配置が若干異なる別の容器について出願すると、先願の規定(9条)により拒絶される()17条1号

(3) 関連意匠

 凸部の配置が若干異なる別容器の意匠、物品「容器」について、特徴的な凹凸形状を備える意匠を本意匠として関連意匠として保護することができる(10条)
 メリットとして、特徴的な凹凸形状を備える意匠に類似する意匠である凸部の配置が若干異なる別容器についても、登録意匠として保護される。
 デメリットとして、存続期間が本意匠の存続期間満了時と同じになること(21条2項)、関連意匠を移転する場合、制約がある(22条1項、2項)ことが挙げられる。

(4) 秘密意匠

   出願と同時、又は登録料の納付と同時に、秘密意匠の請求をすることができる(14条2項)。甲は、意匠権の設定の登録から2年間の期間を指定し、出願する意匠について秘密にすることを請求することができる(同条1項)
 メリットとして、製造販売までは、当該意匠を非公開にすることができる。
 デメリットとして、秘密意匠の請求をするために、手数料を納付する必要がある(67条2項)

 

平成29年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [意匠]

平成29年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [意匠]

【問題Ⅱ】

 甲は、意匠イを創作し、平成27 年3月10 日に意匠イについて意匠登録出願Aをし、平 成27 年6月1日に展示販売会に出品し、その後、受注活動を継続している。また、展示販 売会での反響を参考にして、平成27 年7月10 日に、意匠イを改変した意匠ロを創作した。 平成27 年8月30 日に、意匠イ及びロに係る物品を製造するための製造設備を用意し、そ の後、意匠ロについて受注活動を開始した。そして、平成28 年1月10 日に意匠イ、意匠 ロの双方に係る物品の販売を開始した。意匠ロは明らかに意匠イと類似するものであった ので、甲は意匠ロについて意匠登録出願をしていない。
 意匠登録出願Aは、公知意匠に類似するとの理由で拒絶査定となり、平成28 年1月20 日にこの査定は確定した。
 乙は、平成27 年7月20 日に、自ら独自に創作した意匠ハについて意匠登録出願Bをし、 平成27 年12 月1日に設定登録された。意匠ハは意匠イ、意匠ロの双方に類似するもので あった。
 乙は、平成28 年2月1日に、甲に対し、甲による意匠イ及び意匠ロに係る物品の販売 は、乙が保有する意匠ハに係る意匠権の侵害であるとの警告をした。
 甲は、意匠イも意匠ロも自分が独自に創作したのに侵害だと言われる理由が解らずに、 また、侵害への対応について弁理士に相談した。
 甲から相談を受けた弁理士として、甲が侵害だと言われる理由を述べた上で、侵害警告 への対応について、甲に説明すべき事項を列挙し、適用条文とその立法趣旨を含めて事案 に即して述べよ。
 なお、意匠法の適用関係に限り、権利行使の制限(意匠法第41 条において準用する特許 法第104 条の3)には言及しないものとする。 【60点】

1. 侵害だといわれる理由

 侵害とは、権限又は理由無き第三者が、業として登録意匠又はこれに類似の意匠を実施することである(23条)
 意匠とは創作物であり、産業の発達に寄与するために、新規に創作した意匠の保護及び利用を図ることが法目的である(1条)。意匠を保護するために、登録主義を採用しており、登録された意匠について権利者は、独占排他権を得る。そのため、権利を有さない者の登録意匠の実施が制限される。

2. 侵害警告への対応

(1) 否認の検討

 題意より、乙の登録意匠に係る意匠ハは、甲の実施している意匠イ、及び意匠ロに類似するものであるため、甲は、乙の主張を否認することができない。

(2) 先使用による抗弁

 甲が実施する意匠イ、及び意匠ロについて、先使用による通常実施権(29条)を有するかを検討する。
 新規に創作した意匠について権利付与されるところ、先に創作した意匠についてまで権利行使できるとすると、公正性に反し、また実施している機材等が稼働しなくなることで経済的でない。そのため、先に創作した意匠について通常実施権を有する旨が、規定されている。
 ここで、乙が意匠ハについて出願Bをした際、甲は独自に創作した意匠イについて、展示販売会への出品、及び受注活動を行っていたため、通常実施権を有する旨を主張することができる。それに対し、意匠ロについては事業の準備を明確にはしていないため、先使用の通常実施権を有することを主張することができない。

(3) 先出願による抗弁

 甲が実施する意匠ロについて、先出願による通常実施権(29条の2)を有するかを検討する。  公知を理由として出願が拒絶された場合、当該意匠について実施することができるという期待権を得ることができる。それにもかかわらず、後願の登録意匠により、実施している意匠について権利行使されることは、公平性の観念に反し、また経済的でない。
 そのため、先願で拒絶された意匠について、通常実施権を有する旨が規定されている。  ここで、甲は、意匠ロを独自に創作しており、乙の意匠登録出願Bに係る意匠が登録される際、現に意匠イ、及び意匠ロについて、事業の実施のための準備をしている。
 また、出願Bの出願日前に、意匠イに係る出願Aをし、3条1項3号の規定により拒絶査定となっている。  よって、甲は、日本国内において意匠イ、及び意匠ロの事業の実施のための準備を行っていた場合、意匠イに類似する意匠ロについて、その事業の実施の準備をしている範囲内において、意匠ハに係る意匠権についての通常実施権を有することを主張することができる。

(4) 無効審判の請求

 乙の登録意匠ハは、出願時点で公知意匠イに類似するために3条1項3号の無効理由があるとして、無効審判の請求をする(48条1項1号)
 審査で看過された登録意匠により、権利行使することは、意匠法の目的に反するため、当該登録意匠を無効にすることができる。
 意匠登録無効審判は、何人も請求することができる(同条2項)。そのため、甲も請求することができる。
 無効審判の請求が容認され、審決確定すると、乙の登録意匠ハに係る意匠権は初めから存在しなかったものとみなされ49条、甲に対して権利行使することができなくなる。

平成29年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [意匠]

平成29年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [意匠]

【問題Ⅰ】

(1) 意匠法上の物品について説明せよ。 (2) 意匠法における画像の保護の範囲について、意匠が物品に係るものと規定されている観点から述べよ。 【40点】

設問(1)について

 物品とは、有体物のうち、市場で流通する動産である。  そのため、1.原則として動産でないもの、2.個体以外のもの、3.粉状物及び粒状物の集合しているもの、4.物品の一部であるものは物品と認められない。

設問(2)について

1. 2条1項の規定による画像の保護

 意匠とは物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合、つまり形態である(2条1項)。また、物品の部分についても意匠として保護される(2条1項かっこ書き)
 意匠法2条1項の規定により、画像が物品の部分として表示されるものとして保護されるためには、1.その画像を含む意匠の意匠に係る物品が意匠法の対象とする物品と認めれるものであること、2.物品の表示部に表示される画像が、その物品の機能を果たすために必要な表示を行う画像であること、3.物品の表示部に表示される画像が、その物品に記録された画像であること、を満たす必要がある。

2. 2条2項の規定による画像の保護

 従来、2条1項に規定されている物品について、際限のない拡大解釈がなされないように解釈を厳格に行い、画面デザインの一部のみしか保護対象としていない解釈を行ってきた。
 しかし、画面デザインの開発の実情に合致しないことや、画面デザインの模倣被害を適切に防止できないという問題があった。
 そこで、物品の本来的は機能を発揮できる状態にする際に必要となる操作に使用される画面デザイン(画像)について、意匠法の保護対象となるよう、2条2項の規定を設けた。  意匠法2条2項の規定により、画像が保護されるためには、1.その画像を含む意匠の意匠に係る物品が意匠法の対象とする物品と認められるものであること、2.物品の機能を発揮できる状態にするための操作のように供される画像であること、3.当該物品又はこれと一体として用いられる物品に表示される画像であること、4.その画像が、その物品に記録された画像であること、を満たす必要がある。

所感

  • 画像の保護について、2条1項の規定によっても画像を保護できることについて、あまり認識がなかった。
  • 2条1項の規定による画像の保護について、「その物品の機能を果たすために必要な表示」がキーワード。

平成30年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [意匠]

平成30年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [意匠]

【問題Ⅱ】  デザイナー甲は、椅子とテーブルの双方に使用できる「家具用脚」の意匠イを創作し、 意匠に係る物品を「家具用脚」として意匠登録を受け、意匠公報が発行され意匠イは公知 になっている。その意匠登録において、意匠に係る物品の説明に「この意匠は椅子の脚と してもテーブルの脚としても使用できる」と記載されているが、椅子やテーブルの図面は ない。
 甲は、家具メーカー乙に意匠イを提案し、乙は、意匠イに天板(テーブル上部の板)を 取り付けた「テーブル」の意匠ロを創作した。
 乙は、意匠ロについて多様な出願の態様で保護することを検討している。また、今後製 造販売する意匠イを利用した「椅子」と「テーブル」(これらの脚以外の具体的形状はま だ決まっていない)の意匠について製造販売等を独占したいと考え、そのための対策を検 討している。
 乙が取り得る出願の態様を全て示し、それらの効果について説明せよ。あわせて、各出 願の態様の登録の可否を理由とともに説明せよ。
 また、乙が取り得る出願以外の手段について説明せよ。
 ただし、関連意匠の登録には言及しないものとする。
 なお、「家具用脚」「テーブル用天板」は意匠登録の対象となる「物品」であり、意匠イ に係る意匠登録に無効理由はないものとする。 【60点】

1. 物品「椅子」についての出願

 椅子の具体的形状が決まった場合、物品「椅子」となる意匠登録出願をする(6条)。当該意匠が登録(20条1項)されることにより、意匠イを含む椅子の意匠について、業として実施する権利を専有する(23条本文)
 物品「家具用脚」についての意匠イが公知であるため、当該意匠を引用として3条2項に規定する創作容易性に該当しなければ、登録される場合がある。

2. 物品「テーブル」についての出願

 物品「テーブル」について意匠ロの意匠登録出願をする(6条)。当該意匠が登録(20条1項)されることにより、意匠ロを業として実施する権利を専有する(23条本文)。  物品「家具用脚」についての意匠イが公知であるため、当該意匠を引用として3条2項に規定する創作容易性に該当しなければ、登録される場合がある。

3. 物品「天板」についての出願

 物品「天板」について意匠ロの天板の意匠登録出願をする(6条)。当該意匠が登録(20条1項)されることにより、当該天板を業として実施する権利を専有する(23条本文)。そのため、当該天板のみを製造し、使用し、又は譲渡する行為等も権利範囲に含まれる。
 意匠ロについて、意匠登録要件に反することがなければ(17条各号)、登録される(20条1項)

4. 物品「テーブル」について天板の部分意匠に係る出願

 物品「テーブル」について意匠ロの天板の部分意匠に係る意匠登録出願をする(6条、2条1項かっこ書き)。当該部分意匠が登録されることにより(20条1項)、物品「テーブル」について、当該天板を業として実施する権利を専有する(23条本文)。そのため、テーブルの天板にのみ巧妙に模倣するものについて、権利行使可能となる。
 物品「テーブル」に関し、意匠ロの天板部分について、意匠登録要件に反することがなければ(17条各号)、登録される(20条1項)

5. 物品「一組のテーブルセット」についての組物の意匠に係る出願

 物品「一組のテーブルセット」について意匠イを有する椅子と、意匠ロであるテーブルとを組物の意匠として意匠登録出願する(6条1項、8条)。当該組物の意匠が登録されることにより(20条1項)、当該組物の意匠を業として実施する権利を専有する(23条本文)
 「一組のテーブルセット」は、同時に使用される二以上の物品であって経済産業省令で定めるものを構成するものである(8条)。また、意匠イを有する椅子と意匠ロであるテーブルについて、全体として統一があれば、8条の要件を満たす。
 よって、他の意匠登録要件(17条各号)を満たせが、登録される(20条1項)

備考

  • 組物の意匠については、意匠法施行規則に記載。
  • 解答に必要な事項は、以下の通り。

    • 乙が取り得る出願の態様を全て示し、それらの効果について説明せよ。あわせて、各出 願の態様の登録の可否を理由とともに説明せよ。
    • 乙が取り得る出願以外の手段について説明せよ。
      • 今後製 造販売する意匠イを利用した「椅子」と「テーブル」(これらの脚以外の具体的形状はま だ決まっていない)の意匠について製造販売等を独占したいと考え、そのための対策を検 討している。
  • そのため、上記の解答例では、不足。

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 条約 7、8

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【条約】7

パリ条約のストックホルム改正条約(以下「パリ条約」という。)に関し、次の(イ)~(ニ) のうち、正しいものは、いくつあるか。

(イ)

商標に係る権利を有する者は、その代理人又は代表者が、その者の許諾を得ないで、 1又は2以上の同盟国においてその商標について自己の名義による登録の出願をした場 合、その代理人又は代表者が、その行為につきそれが正当であることを明らかにしたと きは、商標を使用することを阻止する権利を有しない。

  • パリ条約 6条の7 (1) 但書きの規定通りである。

(ロ)

本国において正規に登録された商標は、他の同盟国においては、常にそのままその登 録を認められかつ保護される。

×

  • いずれかの同盟国において正規に登録された商標は、他の同盟国(本国を含む。)において登録された商標から独立したものとする(パリ条約 6条(3))

(ハ)

本国において正規に登録された商標が更新された場合、その商標が登録された他の同 盟国における登録も更新しなければならない。

×

  • パリ条約6条(3)の規定通り。

(ニ)

本国において保護されている商標の構成部分に変更を加えた商標は、その変更が、本 国において登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えなければ、他の同盟 国において、いかなる場合においても、登録を拒絶されることはない。

×

  • 本国において保護されている商標の構成部分に変更を加えた商標は、その変更が、本 国において登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えず、かつ、 商標の同一性を損なわない場合には、他の同盟国において、 その変更を唯一の理由として登録を拒絶されることはない(パリ条約 6条の5 C (2))

【条約】8

パリ条約のストックホルム改正条約(以下「パリ条約」という。)に関し、次の(イ)~(ニ) のうち、誤っているものは、いくつあるか。

(イ)

審査により特許出願が複合的であることが明らかになった場合には、特許出願人は、 その特許出願を2以上の出願に分割することができる。この場合において、特許出願人 は、その分割された各出願の日付としてもとの出願の日付を用い、優先権の利益がある ときは、これを保有する。

(ロ)

特許出願人は、自己の発意により、特許出願を分割することができる。この場合にお いて、特許出願人は、その分割された各出願の日付としてもとの出願の日付を用い、優 先権の利益があるときは、これを保有する。

(ハ)

出願人が自己の選択により特許又は発明者証のいずれの出願をもすることができる同 盟国においてされた発明者証の出願は、特許出願の場合と同一の条件でパリ条約第4条 に定める優先権を生じさせるものとし、その優先権は、特許出願の場合と同一の効果を 有する。

(ニ)

出願人が自己の選択により特許又は発明者証のいずれの出願をもすることができる同 盟国において、正規に発明者証の出願をした者又はその承継人は、他の同盟国において 実用新案登録出願することに関し、12 月の期間中、優先権を有する。

  • パリ条約4条 I (1) の規定の通り。
  • 発明者証の出願は、特許出願の場合と同一の条件でこの状に定める優先権を生じさせるため、他の同盟国において、発明者証の出願に基づき優先権を伴う実用新案登録出願をすることができる(パリ条約4条E(2))

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 条約 4~6

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【条約】4

特許協力条約に基づく国際出願に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

国際予備審査報告は、規則の定めるところによって、国際公開される。

選択国は、自国の国内官庁の公用語以外の言語で作成された国際予備審査報告を自国 の公用語に翻訳することを出願人に要求することができる。

国際出願が規則に定める発明の単一性の要件を満たしていないと国際予備審査機関が 認める場合に、出願人が、請求の範囲を減縮し又は追加手数料を支払うことの求めに応 じないときは、国際予備審査機関は、常に、請求の範囲に最初に記載されている発明に ついて国際予備審査報告を作成する。

出願人は、国際予備審査機関と口頭及び書面で連絡する権利を有し、出願人が2回以 上の面談を請求した場合であっても、当該請求が所定の期間内であれば、国際予備審査 機関は、出願人と面談しなければならない。

国際予備審査機関は、選択官庁又は出願人の請求に応じ、規則の定めるところにより、 当該選択官庁又は当該出願人に対し、国際予備審査報告に列記された文献であって、国 際調査報告に列記されていないものの写しを送付する。

【条約】5

特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律に関し、次のうち、正しいものは、どれ か。

特許庁長官は、国際出願において要約書が含まれていないとき、相当の期間を指定し て、書面により手続の補完をすべきことを命じなければならない。

×

  • 補完命令ではなく、補正命令が出される(国願法6条3号)

国際出願においてその国際出願に含まれていない図面についての記載がされていると き、特許庁長官からの補正命令に対して出願人が指定された期間内に図面を提出しなか った場合には、特許庁長官は、その国際出願が取り下げられたものとみなす旨の決定を しなければならない。

×

  • 取下げ擬制の規定には、含まれていない(国願法7条各号)
  • 図面を提出しなかった場合、図面への言及はないものとみなす(PCT14条(2)第3文)

国際出願の願書において当該出願を条約に従って処理すべき旨の申立てを記載しなか ったとき、特許庁長官による手続の補完命令を受ける前であっても、国際出願として提 出された書類が特許庁に到達した日から2月を経過した後でなければ、出願人が手続の 補完をすることにより、当該手続は、補完命令を受けたことにより執った手続とみなす。

特許庁長官は、2人以上が共同して国際出願をした場合において出願人が代表者を定 めていないときは、願書に記載された出願人のうちであって、特許協力条約に基づく国 際出願等に関する法律で規定する日本国民等のうちいずれかのものを代表者として指定 することができる。

×

特許法第8条(在外者の特許管理人)の規定は、特許協力条約に基づく国際出願等に 関する法律の規定に基づく手続に準用されない。

×

  • 国願法19条で準用。

【条約】6

意匠の国際登録に関するハーグ協定ジュネーブ改正協定に関し、次のうち、誤ってい るものは、どれか。

この改正協定において「審査官庁」とは、意匠の保護を求める出願について、当該意 匠が少なくとも新規性の条件を満たしているかどうかを決定するために職権により審査 する官庁をいう。

国際事務局は、国際出願を受理した後直ちに、又は第8条の規定に従って補正をする よう求めている場合には必要な補正を受理した後直ちに、国際出願の対象である意匠を 登録する。その登録は、第11 条に規定の登録の公表が延期されるか否かにかかわらず、 なされる。

国際登録は、国際事務局が公表し、その公表は、全ての締約国において十分なものと みなされ、名義人が他の方法による公表を求められることはない。

国際登録の効果を拒絶する官庁は、所定の期間内に、国際事務局にその拒絶を通報す るとともに、名義人に対しその拒絶の通報の写しを送付する。

×

  • 名義人に対してぎょぜつの通報の写しを送付するわけではない(ジュネーブ改正協定 12条(2)(a))

指定締約国における保護の存続期間は、国際登録が更新されることを条件として、国 際登録の日から起算して15 年とする。ただし、指定締約国の法令に基づいて保護が付与 されている意匠について15 年を超える保護の存続期間を当該指定締約国の法令に定め ている場合には、保護の存続期間は、国際登録が更新されることを条件として、当該指 定締約国の法令に定める期間と同一とする。

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 条約 1~3

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【条約】1

特許協力条約に基づく国際出願に関し、次のうち、誤っているものは、どれか。

出願人が、規則の定めるところによって、条約第2章の規定に拘束される締約国の居 住者又は国民である場合において、そのような締約国の受理官庁又はそのような締約国 のために行動する受理官庁に国際出願をしたときは、その出願人は、国際予備審査の請 求をすることができる。

国際出願に要約が含まれていない場合において、受理官庁が出願人に対し当該欠陥の 補充をすることを求めた旨を国際調査機関に通知したときは、国際調査機関は、その国 際出願は取り下げられたものとみなす旨の通知を受領しない限り、国際調査を続行する。

発明の単一性の要件に含まれる「特別な技術的特徴」とは、請求の範囲に記載された 各発明が全体として先行技術に対して行う貢献を明示する技術的特徴をいう。

指定国は、優先権の回復のための請求を拒否する受理官庁の決定に拘束される。

×

第四十九規則の三

受理官庁による優先権の回復の効果、指定官庁による優先権の回復

49の3.1 受理官庁による優先権の回復の効果
(e)

 指定国は、優先権の回復のための26の2.3の規定に基づく請求を拒否する受理官庁の決定に拘束されることはない。

条約第19 条の規定に基づく補正書は、直接国際事務局に提出する。

【条約】2

特許協力条約に関し、次のうち、誤っているものは、どれか。

各国際出願については、国際事務局のための手数料(「国際出願手数料」)を支払わ なければならない。国際出願手数料は受理官庁が徴収する。

締約国の国内法令に従って設立された法人は、当該締約国の国民とみなす。

条約第14 条(1)(b)により補充された国際出願は、規則に定める所定の様式上の 要件が国際公開が適度に均一なものであるために必要な程度にまで満たされている場合 には、当該様式上の要件を満たさないことを理由として取り下げられたものとみなされ ない。

条約第11 条(2)により補充された国際出願について、なお国際出願日の認定の要件 である条約第11 条(1)に掲げる要件が満たされていない場合には、受理官庁は、出願 人に対し、国際出願として提出された書類に受理官庁が付した番号が国際出願番号とし て用いられないことを通知する。

×

いずれかの締約国において又はいずれかの締約国についてされた先の出願に基づく優 先権の主張を伴う国際出願には、当該締約国の指定を含めることができる。国際出願が、 いずれかの指定国において若しくはいずれかの指定国についてされた国内出願に基づく 優先権の主張を伴う場合又は一の国のみの指定を含む国際出願に基づく優先権の主張を 伴う場合には、当該指定国における優先権の主張の条件及び効果は、当該指定国の国内 法令の定めるところによる。

【条約】3

特許協力条約に基づく国際出願に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

国際予備審査の請求をした後に選択国を追加する場合、後にする選択は、管轄国際予 備審査機関に届け出る。

国際予備審査報告には、請求の範囲に記載されている発明が新規性を有するもの、進 歩性を有するもの(自明のものではないもの)及び産業上の利用可能性を有するものと 認められるかどうかの問題についての予備的なかつ拘束力のない見解を裏付ける文献と して、国際調査報告で引用されている文献はすべて列挙される。

国際予備審査報告において、請求の範囲に記載されている発明が新規性を有するもの、 進歩性を有するもの(自明のものではないもの)及び産業上の利用可能性の基準に適合 していると認められるかどうかを各請求の範囲について、「是」若しくは「非」の語、 報告の言語におけるこれらの同義語又は実施細則で定める適当な記号で記述したときに、 その記述に説明を付さない場合がある。

国際予備審査機関が、補正が出願時における国際出願の開示の範囲を超えてされたも のと認めた場合には、開示の範囲を超えてされた補正と認める理由を表示すると共に、 当該補正後の請求の範囲に基づいて報告を作成する。

国際出願が規則に定める発明の単一性の要件を満たしていないと認める場合に、国際 予備審査機関が、出願人に対し、その選択によりその要件を満たすように請求の範囲を 減縮し又は追加手数料を支払うことを求めたときに、出願人は、異議を申し立てること ができない。