平成28年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [意匠]

平成28年度弁理士試験論文式筆記試験問題[意匠]

【問題Ⅰ】

 甲は、全体形状が斬新な飲料用のPETボトル(容器)を創作した。この容器の胴部は、 手で掴んだ際に変形しないよう工夫された特徴的な凹凸形状を備えている。甲は、凸部の 配置が若干異なる別の容器も創作している。甲は、これら2種類の容器の製造販売を2年 後に予定しており、それまでは非公開にしたいと考えている。甲より相談を受けた弁理士 乙は、これらの容器について特許権による保護も可能であるが、意匠権による保護を提案 することにした。
 上記事例において、甲の創作対象が特許権意匠権の双方で保護され得る理由を簡潔に 述べよ。また、甲の創作対象は意匠法によりどのような態様で保護されるか、考えられる 態様を列挙し、弁理士乙が甲に説明すべき各態様のメリットとデメリットを簡潔に述べよ。 【50点】

解答例

1. 特許権及び意匠権で保護される理由

 技術的思想の創作は特許発明として保護される(2条1項、2項)。手でつかんだ際に変形しないよう工夫された特徴的な凹凸形状は技術的思想の創作といえるため、特許発明として保護される。また、物品や物品の部分の形状、模様、若しくは色彩又はこれらの結合について登録意匠として保護される(2条1項かっこ書き)。PETボトルについて、斬新な全体形状や、特徴的な凹凸形状は意匠であるため、登録師匠として保護される。

2. 意匠法による保護の態様

(1) 通常の意匠

 物品「容器」、斬新な全体形状を登録意匠として保護することができる(2条1項)
 メリットとして、当該意匠と同一又は類似の意匠について独占排他権を得ることができる。
 デメリットとして、特徴的な凹凸形状の部分が他の物品で模倣された場合に、適切に保護することができない。

(2) 部分意匠

 物品「容器」、特徴的な凹凸形状を部分意匠として保護することができる(2条1項かっこ書き)
 メリットとして、特徴的な凹凸形状の部分を取り入れ、かつ全体としては甲が創作した意匠と類似していない巧妙な模倣に対し、権利行使をすることができる。
 デメリットとして、凸部の配置が若干異なる別の容器について出願すると、先願の規定(9条)により拒絶される()17条1号

(3) 関連意匠

 凸部の配置が若干異なる別容器の意匠、物品「容器」について、特徴的な凹凸形状を備える意匠を本意匠として関連意匠として保護することができる(10条)
 メリットとして、特徴的な凹凸形状を備える意匠に類似する意匠である凸部の配置が若干異なる別容器についても、登録意匠として保護される。
 デメリットとして、存続期間が本意匠の存続期間満了時と同じになること(21条2項)、関連意匠を移転する場合、制約がある(22条1項、2項)ことが挙げられる。

(4) 秘密意匠

   出願と同時、又は登録料の納付と同時に、秘密意匠の請求をすることができる(14条2項)。甲は、意匠権の設定の登録から2年間の期間を指定し、出願する意匠について秘密にすることを請求することができる(同条1項)
 メリットとして、製造販売までは、当該意匠を非公開にすることができる。
 デメリットとして、秘密意匠の請求をするために、手数料を納付する必要がある(67条2項)