平成30年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [意匠]

平成30年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [意匠]

【問題Ⅱ】  デザイナー甲は、椅子とテーブルの双方に使用できる「家具用脚」の意匠イを創作し、 意匠に係る物品を「家具用脚」として意匠登録を受け、意匠公報が発行され意匠イは公知 になっている。その意匠登録において、意匠に係る物品の説明に「この意匠は椅子の脚と してもテーブルの脚としても使用できる」と記載されているが、椅子やテーブルの図面は ない。
 甲は、家具メーカー乙に意匠イを提案し、乙は、意匠イに天板(テーブル上部の板)を 取り付けた「テーブル」の意匠ロを創作した。
 乙は、意匠ロについて多様な出願の態様で保護することを検討している。また、今後製 造販売する意匠イを利用した「椅子」と「テーブル」(これらの脚以外の具体的形状はま だ決まっていない)の意匠について製造販売等を独占したいと考え、そのための対策を検 討している。
 乙が取り得る出願の態様を全て示し、それらの効果について説明せよ。あわせて、各出 願の態様の登録の可否を理由とともに説明せよ。
 また、乙が取り得る出願以外の手段について説明せよ。
 ただし、関連意匠の登録には言及しないものとする。
 なお、「家具用脚」「テーブル用天板」は意匠登録の対象となる「物品」であり、意匠イ に係る意匠登録に無効理由はないものとする。 【60点】

1. 物品「椅子」についての出願

 椅子の具体的形状が決まった場合、物品「椅子」となる意匠登録出願をする(6条)。当該意匠が登録(20条1項)されることにより、意匠イを含む椅子の意匠について、業として実施する権利を専有する(23条本文)
 物品「家具用脚」についての意匠イが公知であるため、当該意匠を引用として3条2項に規定する創作容易性に該当しなければ、登録される場合がある。

2. 物品「テーブル」についての出願

 物品「テーブル」について意匠ロの意匠登録出願をする(6条)。当該意匠が登録(20条1項)されることにより、意匠ロを業として実施する権利を専有する(23条本文)。  物品「家具用脚」についての意匠イが公知であるため、当該意匠を引用として3条2項に規定する創作容易性に該当しなければ、登録される場合がある。

3. 物品「天板」についての出願

 物品「天板」について意匠ロの天板の意匠登録出願をする(6条)。当該意匠が登録(20条1項)されることにより、当該天板を業として実施する権利を専有する(23条本文)。そのため、当該天板のみを製造し、使用し、又は譲渡する行為等も権利範囲に含まれる。
 意匠ロについて、意匠登録要件に反することがなければ(17条各号)、登録される(20条1項)

4. 物品「テーブル」について天板の部分意匠に係る出願

 物品「テーブル」について意匠ロの天板の部分意匠に係る意匠登録出願をする(6条、2条1項かっこ書き)。当該部分意匠が登録されることにより(20条1項)、物品「テーブル」について、当該天板を業として実施する権利を専有する(23条本文)。そのため、テーブルの天板にのみ巧妙に模倣するものについて、権利行使可能となる。
 物品「テーブル」に関し、意匠ロの天板部分について、意匠登録要件に反することがなければ(17条各号)、登録される(20条1項)

5. 物品「一組のテーブルセット」についての組物の意匠に係る出願

 物品「一組のテーブルセット」について意匠イを有する椅子と、意匠ロであるテーブルとを組物の意匠として意匠登録出願する(6条1項、8条)。当該組物の意匠が登録されることにより(20条1項)、当該組物の意匠を業として実施する権利を専有する(23条本文)
 「一組のテーブルセット」は、同時に使用される二以上の物品であって経済産業省令で定めるものを構成するものである(8条)。また、意匠イを有する椅子と意匠ロであるテーブルについて、全体として統一があれば、8条の要件を満たす。
 よって、他の意匠登録要件(17条各号)を満たせが、登録される(20条1項)

備考

  • 組物の意匠については、意匠法施行規則に記載。
  • 解答に必要な事項は、以下の通り。

    • 乙が取り得る出願の態様を全て示し、それらの効果について説明せよ。あわせて、各出 願の態様の登録の可否を理由とともに説明せよ。
    • 乙が取り得る出願以外の手段について説明せよ。
      • 今後製 造販売する意匠イを利用した「椅子」と「テーブル」(これらの脚以外の具体的形状はま だ決まっていない)の意匠について製造販売等を独占したいと考え、そのための対策を検 討している。
  • そのため、上記の解答例では、不足。