令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 意匠 4~6

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【意匠】4

意匠登録出願の分割及び出願の変更に関し、次のうち、誤っているものは、どれか。

組物の意匠登録出願を、その組物を構成する物品の意匠ごとの意匠登録出願に分割で きる場合がある。

  • 組物の意匠であったとしても、二以上の意匠を包含するものと認められた場合、分割することができる(10条の2第1項)

特許出願から意匠登録出願への変更においては、いわゆる「部分意匠」の意匠登録出 願とすることができる場合がある。

  • できないという規定はない。

特許協力条約に基づく国際特許出願から意匠登録出願への変更は、国際特許出願が我 が国における特許出願として手続的に確定した後でなければできない。

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  • 国際書面の提出(特184条の5第1項)、手数料の納付(195条2項)、外国語特許出願であれば翻訳文の提出(184条の4第1項)後に、意匠登録出願への変更ができる(13条の2第1項)
  • 特許出願として手続き的に確定した後とは、上述の手続きをした後、国内処理基準時(184条の4第6項)の属する日を経過した後であるため、手続き的に確定した後でなければならないわけではない。
  • 特許出願として手続き的に確定した後とは、上述の手続きをした後である。

ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく我が国を指定締約国とする国際出願は、そ の国際出願が2以上の意匠を含む場合、我が国において意匠ごとに出願を分割する手続 をしなければならない。

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  • 我が国において、2以上の意匠を含む意匠登録出願はできない(7条)ため、意匠ごとにされた意匠登録出願とみなされる。(60条の6第1項、2項)
  • 意匠ごとに分割する手続きをしなければならないという規定はない。

意匠登録出願において、「使用状態を示す参考図」のみに記載された意匠を、意匠登 録出願の分割によって、新たな意匠登録出願とすることはできない。

  • 意匠権は、意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面から発生するため(6条1項柱書、24条1項)、「使用状態を示す参考図」にのみ記載された意匠を、分割出願することはできない。

【意匠】5

意匠法第3条第1項各号(新規性)及び意匠法第4条(新規性の喪失の例外)に関し、 次のうち、誤っているものは、どれか。なお、各設問で言及した条文の該当性のみを判断 し、他の登録要件は考慮しないこととする。 また、特に文中に示した場合を除き、意匠登録出願は、いかなる優先権の主張も伴わず、 秘密意匠に係るものでも、分割又は変更に係るものでも、補正後の意匠についての新出願 でも、冒認の出願でもなく、かつ、放棄、取下げ又は却下されておらず、査定又は審決が 確定しておらず、いかなる補正もされていないものとし、また、名義変更、秘密にする期 間の変更は行わないものとし、ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく特例を考慮しな いものとする。

意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする国際意匠登録出願の出願人は、意 匠法第3条第1項第1号又は第2号に該当するに至った意匠が意匠法第4条第2項の規 定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面を、国際登録後であれば 国際公表前であっても、特許庁長官に提出することができる。

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  • 国際意匠登録出願について、日本国が指定国であり、国際公表されたものは、国際登録の日にされた意匠登録出願とみなされる(60条の6第1項)
  • 新規性の喪失の例外について、例外を受ける旨を記載した書面、及びその証明書面を、国際公表があった日後、経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出することができる(60条の7)
  • 意匠登録出願とみなされた後でないと、新規性喪失の例外について、請求することができない。

甲は、互いに類似する意匠イ及び意匠ロを公知にした後、意匠イについて、意匠法第 4条第2項の適用を受けようとする旨を記載して意匠登録出願Aをし、出願日から30 日以内に意匠イのみについて、意匠法第4条第3項に規定する証明書を提出した。出願 Aは、意匠ロの存在を理由に、意匠法第3条第1項第3号に該当するとして拒絶される。

  • 意匠ロについて、新規性の喪失の例外の規定を受けていないため、意匠ロを引例として3条1甲3号で拒絶される(17条1号)

甲は、意匠イを創作して、ある日の朝に意匠イをインターネットの自己のサイトで公 開した。その日の夕方に意匠イについて意匠登録出願Aをした。甲は、意匠イについて 意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるための手続をしていなければ、出願Aは、意 匠法第3条第1項第2号に該当するとして拒絶される。

  • 3条1項各号は、時分を考慮する。

甲は、意匠イを創作して、展示会で自らの名前で意匠イを公開した。その後、甲は、 乙に意匠登録を受ける権利を譲渡して、乙が意匠イについて意匠登録出願Aをした。こ の出願に際し、乙は意匠法第4条第2項の適用を受けようとする旨の主張をして、かつ 甲が意匠イを公開した旨の証明書を出願日から30 日以内に提出した。出願Aは、甲が 展示会で意匠イを公開した事実を理由に、意匠法第3条第1項第1号に該当するとして 拒絶されることはない。

  • 4条3項の手続きは、意匠登録を受ける権利の譲渡人が公開した場合であっても、譲受人もすることができる(4条3項)

甲は、形状、模様及び色彩からなる意匠イを創作して、その後、意匠イを展示会で公 開した。その後、甲は、意匠イから模様及び色彩を除いた形状のみの意匠ロについて、 意匠登録出願Aをした。出願Aは、意匠イについて意匠法第4条第2項の規定の適用を 受けるための手続をすれば、意匠イを公開した事実を理由に、意匠法第3条第1項第3 号に該当するとして拒絶されることはない。

  • 4条3項の手続きにより、形状、模様及び色彩からなら意匠イを引例として3条1項、及び2項で拒絶されなくなる。

【意匠】6

意匠登録出願の補正及び補正の却下等に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

願書の記載又は願書に添付した図面、写真、ひな形若しくは見本についてした補正が これらの要旨を変更するものであるとして補正を却下する決定があったとき、審査官は、 その決定の謄本の送達があった日から意匠法に定められた期間を経過するまでは、当該 意匠登録出願について審査を中止しなければならない。

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  • 補正却下の決定の謄本の送達後、3月以内は、査定をしてはならない(17条の2第3項)。審査を中止しなければならないわけではない。
  • 新出願をする場合、審査を中止しなければならない。
  • 補正却下不服審判を請求した時(47条)は、その審判の審決確定まで、審査を中止しなければならない(17条の2第4項)

審査官は、決定をもって補正を却下しようとするときは、あらかじめその理由を書面 で通知し、意見書を提出する機会を与えなければならない。

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  • 意見書の提出機会は与えられない。

願書に添付する図面に代えて写真、ひな形又は見本を提出した場合、願書に記載した 「写真、ひな形又は見本の別」の記載のみを変更する補正は、いかなる場合も願書の記 載の要旨を変更するものとされることはない。

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  • 要旨変更とみされる場合がある。
  • 問題文の通り。

意匠審査基準 H29年改正

82.1.2.2 要旨変更とならない補正の類型

  • 82.1.2.2.1 その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて当然に導き出すことができる同一の範囲のものに訂正する場合。
  • 82.1.2.2.2 意匠の要旨の認定に影響を及ぼさない程度の微細な部分の記載不備を不備のない記載に訂正する場合
  • 問題文は、82.1.2.2.1の類型だと思われる。

意匠登録出願人は、願書に添付した図面についてした補正がその要旨を変更するもの であるとして却下された場合、補正の却下の決定の謄本の送達があった日から意匠法に 定められた期間内に限り、図面について再度の補正をすることができる。

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  • 事件が審査、審判又は再審に係属している限り、その補正をすることができる(60条24)
  • 補正却下の決定の謄本の送達日から法廷期間内に限りできるわけではない。

補正の却下の決定の謄本の送達があった日から意匠法に定められた期間を経過した後 は、意匠登録出願人はその補正後の意匠について新たな意匠登録出願をすることはでき ない。

×

  • 17条の3第1項の規定の他、17条の4第1項の規定により、新たな意匠登録出願をすることができる。