令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 16~18

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【特許・実用新案】16

特許法及び実用新案法に規定する特許料等に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、誤っているも のは、いくつあるか。

(イ)

特許権の設定の登録の日から存続期間の満了までの各年分の特許料について、第1年 から第3年までの各年分の特許料は一時に納付しなければならないが、第4年以後の各 年分の特許料は、前年に納付しなければならず、数年分を一時に納付することはできな い。

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  • 数年分を一時に納付することもできる(青本 108条2項)

(ロ)

特許について特許権者と実施許諾について交渉途中の者は、特許権者が実施許諾を明 確に拒絶している場合でも、当該特許の特許料を納付することができる。

  • 利害関係人その他特許料を納付するべき者以外の者は、することができる(110条1項)

(ハ)

特許を無効にすべき旨の審決から2年以上経過して当該審決が確定した場合、特許料 を納付した者は、当該審決が確定した日から6月を経過する前であれば、既納の特許料 のうち、当該審決がなされた年の翌年以後の各年分の特許料の返還を受けることができ る。

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  • 6月を経過した後であっても、既納の特許料の返還を請求する年の翌年以後の各年分の特許料の返還を受けることができる。
  • 既納の特許料は、特許無効審判の審決が確定した年の翌年以後の各年分の特許料を、請求により返還する(111条1項2号)
  • 審決が確定した日から6月を経過した後は、請求することができない(同条2項)
  • 審決がなされた年の翌年以後ではない。

(ニ)

特許法には、第1年から第3年までの各年分の特許料は、特許をすべき旨の査定の謄 本の送達があった日から30 日以内に一時に納付しなければならない旨の規定があり、実 用新案法には、第1年から第3年までの各年分の登録料は、実用新案登録出願と同時に (出願の変更又は出願の分割があった場合にあっては、その出願の変更又は出願の分割 と同時に)一時に納付しなければならない旨の規定がある。

  • 108条1項、及び実32条1項の規定通り。

(ホ)

特許料の納付は、経済産業省令で定めるところにより、特許印紙又は現金をもってす ることができる。

  • 107条5項の規定通り。

【特許・実用新案】17

特許法第29 条の2(いわゆる拡大された範囲の先願)及び第39 条(先願)に関し、次 のうち、誤っているものは、どれか。 ただし、特に文中に示した場合を除いて、特許出願は、外国語書面出願、国際出願に係 る特許出願、特許出願の分割に係る新たな特許出願、出願の変更に係る特許出願又は実用 新案登録に基づく特許出願ではなく、取下げ、放棄又は却下されておらず、査定又は審決 が確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる優先権の主張も伴わないもの とする。 また、特に文中に示した場合を除いて、実用新案登録出願は、国際出願に係る実用新案 登録出願、実用新案登録出願の分割に係る新たな実用新案登録出願、出願の変更に係る実 用新案登録出願ではなく、実用新案登録に基づく特許出願がされておらず、取下げ、放棄 又は却下されておらず、審決が確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる 優先権の主張も伴わないものとする。 さらに、特に文中に示した場合を除いて、発明及び考案については、いずれも出願人が 自らしたものとし、発明イと考案イは同一であるとする。

甲は、特許請求の範囲に発明イが記載された特許出願Aを出願し、乙は、実用新案登 録請求の範囲に考案イが記載された実用新案登録出願Bを、特許出願Aと同日に出願し た。甲と乙の協議が成立しない場合、甲は特許出願Aに記載された発明イについて特許 を受けることができず、乙は実用新案登録出願Bに記載された考案イについて実用新案 登録を受けることができない。

  • 39条3項の規定通り。

甲は、特許請求の範囲に発明イが記載され、明細書及び図面に発明イ及びロが記載さ れた特許出願Aを出願し、特許出願Aの出願の日後に、乙が、特許請求の範囲に発明ロ を記載した特許出願Bを出願した。この場合、甲が特許出願Bの審査請求後に特許出願 Aの特許請求の範囲を発明ロに補正したとき、当該補正後の特許出願Aは特許出願Bを 先願として特許法第39 条の規定により拒絶されることはない。

  • 補正をしたとしても、出願Aの出願日は、出願Bの出願日より早いため、出願Aは、出願Bを引例として、39条で拒絶されることはない49条2号

甲は、実用新案登録請求の範囲と考案の詳細な説明に考案イが記載された実用新案登 録出願Aを出願した。さらに、甲は、実用新案登録出願Aの出願の日後に、特許請求の 範囲に発明イが記載された特許出願Bを出願し、その後、実用新案登録出願Aの実用新 案掲載公報が発行された。この場合、特許出願Bは、実用新案登録出願Aをいわゆる拡 大された範囲の先願として特許法第29 条の2の規定により拒絶されることはない。

  • 出願人同一のため、29条の2但書きの規定により拒絶されることはない。

甲は、特許請求の範囲に発明イが記載された特許出願Aを出願し、乙は、実用新案登 録請求の範囲に考案イが記載された実用新案登録出願Bを、特許出願Aと同日に出願し、 丙は、特許請求の範囲に発明イが記載された特許出願Cを、特許出願A及び実用新案登 録出願Bの出願の日後に出願した。この場合、甲と乙の協議が成立しないことから特許 出願Aについて拒絶をすべき旨の査定が確定したとき、特許出願Cは特許出願Aを先願 として特許法第39 条の規定により拒絶されることはない。

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  • 出願Aと出願Bは同日出願で、協議不成立のため拒絶された場合(39条2項)、先願の地位が残る(同条5項但書き)
  • そのため、出願Cは、出願Aを39条の引例として、拒絶される(49条2号)

甲は、特許請求の範囲に発明イが記載され、明細書及び図面に発明イ、ロ及びハが記 載された特許出願Aを分割して特許請求の範囲に発明ロが記載され、明細書及び図面に は発明イ、ロ及びハが記載された新たな特許出願Bをした。その後、特許出願Aは、出 願公開されることなく拒絶をすべき旨の査定が確定し、特許出願Bは出願公開された。 乙は、特許請求の範囲、明細書及び図面に発明ハが記載された特許出願Cを、特許出願 Aの出願の日後であって、特許出願Bの出願の日前にした。この場合、特許出願Cは、 特許出願Aをいわゆる拡大された範囲の先願として特許法第29 条の2の規定により拒 絶されることはなく、特許出願Bをいわゆる拡大された範囲の先願として特許法第29 条の2の規定により拒絶されることもない。

  • 出願Aは出願公開されていないため、29条の2の引例となりえない。
  • 分割出願Bは、29条の2の規定における他の特許出願について、遡及効がないため(44条2項但書き)、出願Cの日前の出願とみなされず、29条の2の引例となりえない。

【特許・実用新案】18

特許異議の申立てに関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。

(イ)

同一の特許について、訂正審判が特許庁に係属中に特許異議の申立てがされたときは、 当該訂正審判と当該特許異議の申立てについての審理は、特別の事情がある場合を除き、 併合するものとする。

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  • 訂正審判と特許異議の申立てとの審理併合は規定されていない。
  • 同一の特許権に係る二以上の特許異議の申立てについては、その審理は、特別の事情がある場合を除き、併合するものとする(120条の3)
  • 審理併合の規定がある(154条1項)。訂正審判と無効審判が併合される場合があるかなと思ったが、訂正審判と無効審判が同時に審理されることはない(126条2項、)。訂正審判継続中に、無効審判を請求できない旨の規定は見当たらない。
  • 青本にも、審理併合は無効審判と無効審判との併合について記載しており(青本 154条)、別種の審理を併合することまで、考えていないと思う。

(ロ)

2以上の請求項に係る特許について、請求項ごとに特許異議の申立てがされた場合、 特許異議の申立てがされた請求項以外の請求項について、特許法第120 条の5第2項の 規定による訂正の請求をすることはできない。

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  • 特許異議の申立てがされた請求項以外の請求項について、訂正の請求をすることができないという制約はない(120条の5第2項)

(ハ)

2以上の請求項に係る特許について、その全ての請求項に対し特許異議の申立てがさ れた場合、その一部の請求項についてのみ特許を取り消すべき旨の決定が確定したとき であっても、特許異議の申立てがされた全ての請求項に係る特許権が、初めから存在し なかったものとみなされる。

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  • 取消決定(114条3項)は、請求項ごとにされる(185条)。全ての請求項に係る特許権が、初めから存在しなかったものとみなされるわけではない。
  • 特許異議の申立てについての決定は、特許異議申立て事件ごとに確定し(120条の7本文)、請求項ごとに特許異議申し立てがあれば、一群の請求項、又は請求項ごとに確定する(120条の7但書き1号、2号)のであれば、全ての請求項に対して申立てされた場合、全ての請求項について、取消決定がされるような気もするが、それは特許権者にとって酷な気もする。

(ニ)

特許法には、特許法第120 条の5第2項の規定による訂正の請求がされた場合におい て、その特許異議申立事件において先にした訂正の請求があるときは、後の訂正の請求 は、先の訂正の請求に係る訂正の請求書に添付された訂正した明細書、特許請求の範囲 又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない旨の規定がある。

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  • 先にした訂正の請求があるときは、取り下げられたものとみなす(120条の5第7項)

(ホ)

特許法第120 条の5第1項の規定による通知(いわゆる取消理由通知)において指定 された期間内に特許権者からされた訂正の請求について、特許異議申立人から意見書が 提出された場合、審判長は、その意見書の副本を特許権者に送付し、相当の期間を指定 して、意見書を提出する機会を与えなければならない。

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  • 無効審判において、請求書の補正がある場合、被請求人は、答弁書を提出する機会を与えられる(134条2項)が、それに相当する規定は、特許異議申立てにはない。