令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 10~12

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【特許・実用新案】10

特許無効審判、実用新案登録無効審判又は訂正審判に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、誤っ ているものは、いくつあるか。

(イ)

外国語書面出願に係る特許に対しては、特許法第17 条の2第3項に規定する要件(い わゆる新規事項の追加の禁止)を満たしていないこと、同法第36 条第6項第4号に規定 する要件(いわゆる特許請求の範囲の記載に関する委任省令要件)を満たしていないこ と、同法第37 条に規定する要件(発明の単一性の要件)を満たしていないことを理由と する特許無効審判は、いずれも請求することはできない。

×

  • 新規事項追加違反は、外国語書面出願では適用されない(123条1項1号)

(ロ)

訂正審判は、特許権を放棄した後においても、請求することができる場合がある。

  • 126条8項本文に規定する通り。放棄は消滅に含まれる。

(ハ)

実用新案登録無効審判の請求は、被請求人から答弁書の提出があった後は、いかなる 場合においても、相手方の承諾を得なければその審判の請求を取り下げることができな い。

×

  • 特許の場合、155条2項の規定通り。
  • 実用新案の場合、原則、39条の2第2項の規定通り、相手方の承諾を得なければ審判請求を取り下げることができない。
  • 例外として、相手方が特46条の2の特許出願する場合、その通知を受けた日から30日以内に限り、審判請求を取り下げることができる(39条の2第3項)

(ニ)

特許無効審判において、審理の終結が当事者及び参加人に通知されることなく、審決 がされることがある。

×

  • 審決は、審理の終結の通知を発した日から20日以内にしなければならない(156条4項)。そのため、審理の終結の通知がされることなく、審決がされることはない。

(ホ)

特許無効審判の請求書の副本を被請求人に送達する前に当該請求書を補正する手続補 正書が提出された場合、当該補正が請求書に記載された請求の理由の要旨を変更するも のであっても、審判長は、当該補正が審理を不当に遅延させるおそれがないことが明ら かなものであるときは、当該補正を許可することがある。

×

  • 特許無効審判の請求書の補正(131条の2第2項)の許可は、その補正に係る手続補正書が、特許無効審判の請求書の副本が被請求人に送達(134条1項)する前に提出されたときは、これをすることができない(131条の2第3項)

【特許・実用新案】11

特許権及び実施権に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

甲が自己の特許権の全部の範囲について、乙に通常実施権を許諾した後は、丙に専用 実施権を設定することはできない。

×

  • 通常実施権(78条1項)は、債権的権利であり、許諾したからといって、専用実施権を設定することができないわけではない。

甲が自己の特許権について、乙に専用実施権を設定し、その登録がされている場合、 乙の専用実施権は、実施の事業とともにする場合又は甲の承諾を得た場合に限り移転す ることができる。

×

  • 相続その他の一般承継による場合についても、移転をすることができる(77条3項)

甲が自己の特許権の全部の範囲について、乙に専用実施権を設定し、その登録がされ ている場合、甲は、当該特許権を侵害している丙に対して差止請求権の行使をすること ができない。

×

  • 特許権者は、専用実施権を設定していたとしても、差止請求権を行使することができる(100条1項)
    • 専用実施権を設定したことにより得られる金額が減る可能性がある。
    • 専用実施権が消滅した後、特許発明を実施しようとした場合、市場が荒らされている場合がある。
    • 請求権を行使できないという規定はない。

甲が自己の特許権について、乙に専用実施権を設定し、その登録がされている場合、 丙に対して、当該特許権についての専用実施権を設定することができる場合はない。

×

  • 専用実施権を設定する範囲が異なれば、専用実施権を設定することができる(77条1項)

甲が自己の特許権の全部の範囲について、乙及び丙に対して、両者の共有とする専用 実施権を設定し、その登録がされている場合、乙は、契約で別段の定めをした場合を除 き、甲及び丙の同意を得ることなく、その特許発明の実施をすることができる。

×

  • 専用実施権において、特許権の共有の規定を準用してる(77条5項で準用する73条2項)

【特許・実用新案】12

特許法に規定する審判又は再審に関し、次のうち、誤っているものは、どれか。

特許異議の申立てに係る特許を取り消すべき旨の決定(取消決定)又は審決が確定し た日から3年を経過した後であっても、再審を請求することができる場合がある。

  • 審決が前にされた確定審決と抵触することを理由とする再審の請求は、事柄の性質上、請求期間は無制限である(青本 173条6項)

審判長は、特許無効審判の確定審決に対する再審においては、事件が審決をするのに 熟したときは、審理の終結を当事者及び参加人に通知しなければならない。

×

  • 特許無効審判の再審において、審理終結通知の規定は準用されている(174条3項で準用する156条1項)
  • 審決予告は非準用(174条3項で164条の2非準用)

特許権者甲がその特許権について乙のために質権を設定し、その後丙が請求した特許 無効審判で甲と丙とが共謀し、虚偽の陳述によって審判官を欺いて特許を無効にすべき 旨の審決をさせ、その審決が確定した場合において、乙は甲のみを被請求人としてその 確定審決に対し再審を請求することができる。

×

  • いわゆる詐害審決に対する再審は、その審決における審判の請求人と被請求人を、共同被請求人として請求しなければならない(172条2項)

請求人が申し立てない請求の趣旨については、審判及び再審のいずれにおいても、審 理することができない。

  • 153条3項の規定通り。審判においては、請求人が申し立てない請求の趣旨については、審理することができない。

再審の確定審決に対し、当事者又は参加人は、再審を請求することができる。

  • 171条1項の規定通り。確定審決に対しては、当事者又は参加人は、再審を請求することができる。
  • 確定審決とは、再審の確定審決も含む(青本 171条1項)
  • 参加人は、当事者参加人(148条1項)、及び補助参加人(同条3項)を含む。