令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 13~15

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【特許・実用新案】13

特許出願の手続及び出願公開に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつある か。

(イ)

発明イについての特許を受ける権利が甲及び乙の共有に係る場合であって、甲が単独 で発明イについての特許出願Aを行った場合、特許庁長官は、特許法第38 条の規定に 違反していることを理由として、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命 ずることができる。

×

  • 38条違反は拒絶理由(49条2号)のため、拒絶理由を通知する(50条)
  • 手続き補正命令は、主体適格違反、方式違反、手数料未納の場合にされる(17条3項)

(ロ)

出願人甲は、特許出願Aの出願日から3年経過後に、その出願の一部を分割して新た な特許出願Bとした。特許出願Bの出願の日から30 日経過した後は、特許出願Bにつ いて出願審査の請求をすることができる場合はない。

×

  • 正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間に限り、出願審査の請求をすることができる(48条の3第7項で準用する同条5項)

(ハ)

審査官は、特許出願について拒絶の理由を発見しないときは、特許をすべき旨の査定 をしなければならず、当該特許をすべき旨の査定には理由を付さなければならない。

  • 51条、52条1項の規定の通り。

(ニ)

物の発明に係る特許権Aの特許権者甲は、特許権Aの設定の登録前に当該発明に係る 物を業として使用していた乙に対して、特許権Aの設定の登録後に、特許法第65 条第 1項に規定する補償金の請求権を行使した。乙が特許権Aの設定の登録後も引き続き当 該発明に係る物を業として使用した場合に、甲は、特許権Aの侵害を理由として損害賠 償の請求をすることができる場合がある。

  • 補償金請求権の行使は、特許権の行使を妨げない(65条4項)

(ホ)

外国語書面出願の出願人甲は、外国語書面の日本語による翻訳文を特許庁長官に提出 したが、当該翻訳文には、外国語書面に記載した事項の範囲内にない事項が含まれてい た。その後、当該外国語書面に記載した事項の範囲内にない事項について補正されず審 査が行われた場合、審査官は、当該翻訳文に外国語書面に記載した事項の範囲内にない 事項が含まれていることを理由として、出願人甲に対して拒絶の理由を通知しなければ ならない。

  • 49条6号の規定通り。

【特許・実用新案】14

特許を受ける権利等、仮専用実施権及び仮通常実施権に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正 しいものは、いくつあるか。

(イ)

使用者等が職務発明の発明者に対して与える表彰状等のように発明者の名誉を表する だけのものであっても、特許法第35 条第4項に規定される「相当の利益」に含まれる。

×

  • 相当の利益とは、金銭上の対価の他、留学の機会やストックオプションの付与等の金銭以外の経済上の利益も含まれる。
  • しかし、経済的価値を有さないと評価されるものは、相当の利益に含まれない。

(ロ)

同一の者から承継した同一の発明及び考案についての特許を受ける権利及び実用新案 登録を受ける権利について同日に特許出願及び実用新案登録出願があったときは、時、 分を考慮して最先の出願をした者以外の者の承継は、第三者に対抗することができない。

×

  • 同日の権利の承継について、時、分は考慮されず、協議命令がでる(34条3項)
  • 実用新案は、特許のように、実体審査を行わないので、協議命令はでないような気もする。

(ハ)

共有に係る仮通常実施権についてその持分を譲渡する場合には、各共有者は、他の共 有者の同意を得なければならない。

×

  • 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持ち分を譲渡することができない(33条3項)。共有に係る仮通常実施権においても同様(34条の3第12項で、33条3項を準用)

(ニ)

仮専用実施権者は、特許を受ける権利を有する者の承諾を得た場合に限り、その仮専 用実施権に基づいて取得すべき専用実施権について、他人に仮通常実施権を許諾するこ とができる。

  • 34条の2第4項の規定通り。

(ホ)

仮専用実施権者によって許諾された仮通常実施権は、その特許出願について特許権の 設定の登録があったとき、その特許出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下され たとき又はその特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき に消滅するが、その仮専用実施権が消滅したときには消滅しない。

×

  • 34条の2第11項の規定通り。

【特許・実用新案】15

特許出願に関する優先権に関し、次のうち、正しいものは、どれか。 ただし、特に文中に示した場合を除いて、特許出願は、外国語書面出願、国際出願に係 る特許出願、特許出願の分割に係る新たな特許出願、出願の変更に係る特許出願又は実用 新案登録に基づく特許出願ではなく、取下げ、放棄又は却下されておらず、査定又は審決 が確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる優先権の主張も伴わないもの とし、文中に記載した優先権の主張は取り下げられていないものとする。

特許法第41 条第1項の規定による優先権の主張を伴う特許出願をする場合において、 先の出願について仮通常実施権を有する者があるときには、当該特許出願の際に、当該 仮通常実施権を有する者の承諾を得なければならない。

×

  • 仮専用実施権を有する者があるときは、承諾を得なければならない(41条1項但書)
  • 仮通常実施権を有する者は、原則、優先権主張を伴う特許出願に係る特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権について仮通常実施権を有する(34条の3第5項)。そのため、仮専用実施権の場合のように、承諾を必要としない。

甲は、パリ条約の同盟国である国Xにおいてした特許出願Aの出願日から1年以内に、 特許出願Aに係る発明と同一の発明について、パリ条約第4条D(1)の規定により優 先権を主張して、日本国に特許出願Bをした。この場合、国Xが、特許法第43 条第2 項に規定する書類(いわゆる優先権書類)を日本国と電磁的方法により交換することが できる国でなくとも、甲は、優先権書類を特許庁長官に提出したものとみなされること がある。

  • よくわからない。優先権書類の提出擬制は、43条5項のみの規定だと思う。

パリ条約の同盟国又は世界貿易機関の加盟国のいずれにも該当しておらず、日本国民 に対し、日本国と同一の条件により優先権の主張を認めることとしている国Xの国民が 国Xにおいてした出願に基づく優先権、及び日本国民又はパリ条約の同盟国の国民若し くは世界貿易機関の加盟国の国民が国Xにおいてした出願に基づく優先権は、パリ条約 第4条の規定の例により、日本国における特許出願について、これを主張することがで きる場合はない。

×

  • 43条の3に規定するパリ条約の例による優先権を主張することができる。

意匠登録出願を基礎として、特許法第41 条第1項の規定による優先権の主張を伴う 特許出願をすることができる。

×

  • 意匠登録出願を基礎として、国内優先権を主張できる旨の規定はない(41条1項)

甲は、特許出願Aをした後、特許出願Aを実用新案登録出願Bに変更した。特許出願 Aの出願の日から1年以内であって、実用新案登録出願Bについて実用新案法第14 条 第2項に規定する設定の登録がされていない場合に、甲は、実用新案登録出願Bの実用 新案登録の請求の範囲に記載された発明に基づく特許法第41 条第1項の規定による優 先権の主張を伴う特許出願Cをすることができる。

×

  • 変更を伴う出願に基づいて優先権の主張を伴う特許出願をすることはできない(41条1項2号)