令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 商標 7~10

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【商標】7

商標権の効力等に関し、次のうち、正しいものは、どれか。 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

登録商標A(色彩のみからなる登録商標を除く。以下本枝において同様とする。)に 類似する商標であって、色彩を登録商標Aと同一にするものとすれば登録商標Aと同一 の商標であると認められる商標Bであっても、登録商標Aとは同一ではなく類似する商 標なので、商標権者は、商標Bに関し、登録商標Aに係る商標権についての専用使用権 を設定することができない。

×

  • 色違い類似商標の規定(70条1項)において、専用使用権の設定の登録の規定(30条1項)は、含まれていないため、色違い類似商標について、専用使用権を設定することはできないと思っていたが、できるらしい
  • 専用使用権者は、色違い類似商標を使用することができる(70条1項で、30条2項を準用)
  • 他の枝との関係で、正誤を決めるしかないようにも思う。

指定商品に類似する商品についての登録商標の使用は商標権又は専用使用権を侵害す るものとみなされるところ、商品の類否は、商品自体が取引上誤認混同のおそれがある かどうかを基準として判断すべきであって、商品の出所についての誤認混同のおそれが あるかどうかを判断基準とする必要はない。

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  • 指定商品の類否は、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあると認められるものであるかどうかということにより判定すべきものと解する。商品自体が取引上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判定するべきではない(橘正宗事件)

最判S36.6.27「橘正宗事件」

 商標が類似のものであるかどうかは、その商標を或る商品につき使用した場合に、 商品の出所について誤認混同を生ずる虞があると認められるものであるかどうかと いうことにより判定すべきものと解するのが相当である。そして、指定商品が類似 のものであるかどうかは、原判示のように、商品自体が取引上誤認混同の虞がある かどうかにより判定すべきものではなく、それらの商品が通常同一営業主により製 造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用 するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞がある認められ る関係にある場合には、たとえ、商品自体が互に誤認混同を生ずる虞がないもので あつても、それらの商標は旧商標二条九号(商37条1号)にいう類似の 商品にあたると解するのが相当である

  • 商品「清酒」と「焼酎」は、取引上混同のおそれがないが、出所については誤認混同のおそれがある。つまり、同じ会社が清酒も焼酎も作っていると思いたくなる。

指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であって、その商品又はその 商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを所持する行為は、その商 標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出するという目的がある場合に限り、商標権又は 専用使用権を侵害するものとみなされる。

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  • 37条2号の規定通りである。

登録商標を印刷する以外に用いることができない紙型を業として製造する行為は、そ の紙型を譲渡、引渡し又は輸出するという目的がある場合に限り、商標権又は専用使用 権を侵害するものとみなされる。

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  • 登録商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引渡し、又は輸入する行為は、侵害とみなされる(37条8号)
  • 紙型を業として製造する行為は、その紙型を譲渡、引渡し又は輸出するという目的がある場合に限らず、侵害とみなされる。
  • 紙型を業として輸出する行為は、侵害とみなされない。輸出行為は、商標の使用行為である(2条3項2号)、輸出行為自体は、侵害とはみなされない。輸出のために所持する行為が、侵害とみなされる場合がある(37条2号)

指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受 ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用 いて当該役務を提供するために所持する行為は商標権又は専用使用権を侵害するものと みなされるが、これを用いて他人に当該役務を提供させるために譲渡する行為は商標権 又は専用使用権を侵害するものとみなされることはない。

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  • 役務を提供するために所持する行為は侵害とみなされる(37条3号)
  • 他人に役務を提供させるために譲渡する行為も侵害とみなされる(37条4号)

【商標】8

商標権等の分割、移転、存続期間等に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いく つあるか。 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

(イ)

防護標章登録に基づく権利については、その存続期間の更新登録の出願が存続期間の 満了後6月以内にされたものであるときは、登録料のほか登録料と同額の割増登録料を 納付することにより、その存続期間を更新することができる。

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  • 後期分割登録料の納付期間の経過後6月以内にその登録料を追納することができる(41条の2第5項)。また、割増登録料を納付しなければならない(43条3項)
  • 防護標章登録について、存続期間の満了後6月以内に追納できるという規定はない。
  • 防護標章登録の更新登録出願について、正当理由がある場合、経済産業省令で定める期間内に限り、その出願をすることができる(65条の3第3項)
  • 防護標章登録の登録料納付について、割増登録料の規定(43条)は準用されていない。

(ロ)

商標権の設定登録時に登録料が分割して納付された場合、商標権の存続期間は設定登 録の日から5年で満了するとみなされる。

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  • 商標権の存続期間は、設定の登録の日から10年をもって終了する(19条1項)
  • 分割納付の場合、5年で満了するという規定はない。

(ハ)

商標権者甲は、自己の商標権について指定商品又は指定役務が2以上ある場合であっ て、他人乙に専用使用権を設定していたときは、その商標権を分割するに当たり、乙の 承諾を得なければならない。

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  • 商標権の分割に当たり、使用権者の承諾が必要という規定はない(24条)
  • 商標権の分割は、商標権の移転に近い。移転についても、使用権者の承諾は必要ない。
  • 商標権の放棄については、使用権者の承諾が必要(35条で特97条1項を準用)

(ニ)

商標権の存続期間の更新登録の申請においては、利害関係人は、納付すべき者の意に 反しても、登録料を納付することができる。

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  • 利害関係人は、納付すべき者の意に反しても、登録料を納付することができる(41条の5第1項)
  • 更新登録の申請と同時に納付すべき登録料は、商標権者のみすることができる(同項かっこ書き)。商標権者のみ処分権原を有するため。

(ホ)

公益に関する事業であって営利を目的としないものを行っている者が登録を受けた その事業を表示する標章であって著名なものと同一の商標に係る商標権は、その事業と ともにする場合を除き、一切移転することができない。

  • 24条の2第3項の規定の通り。

【商標】9

商標の審判に関し、次のうち、正しいものは、どれか。 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

拒絶査定に対する審判係属中に指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けよう とする商標が補正され、当該補正に対して補正の却下の決定がされた場合、請求人は、 これに不服があるときは、その決定の謄本の送達があった日から3月以内に審判を請求 することができる。

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  • 拒絶査定不服審判における補正の却下決定に対して(55条の2第3項において準用する16条の2)、不服があるときは、訴訟を提起することができる(63条1項)
  • 補正却下の決定の謄本の送達日後、30日以内に訴訟を提起することができる(63条2項で準用する特178条3項)

登録商標が、その商標登録がされた後、商標登録の無効の審判の請求時までに、地方 公共団体を表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標に該当するものと なっているときは、それを理由として当該審判を請求することができる。

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  • 4条1項6号の無効理由は、後発無効ではないため(46条1項6号)、商標登録がされた後に該当することとなった場合、無効審判を請求することができない。
  • 4条1項5号の無効理由は、後発無効である。無効審判の請求時までに、無効理由に該当していれば、無効審判を請求することができる。
  • 46条1項6号の規定は、「該当するものとなっているとき」であるため、審判請求時においても継続して該当することを審判請求時の要件として明確にしている(青本 46条)

商標法第51 条第1 項の審判(商標権者の不正使用による商標登録の取消しの審判) 及び商標法第53 条第1 項の審判(使用権者の不正使用による商標登録の取消しの審判) において、商標登録に係る指定商品又は指定役務が2以上のものについては、その一部 の指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求すること ができる。

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  • 制裁規定のため、商標登録自体が取り消される。
  • 不使用取消し審判(50条)は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消す。

商標権者が、指定商品について、登録商標(色彩のみからなる登録商標を除く。以下 本枝において同様とする。)に類似する商標であって、色彩を登録商標と同一にするも のとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを使用して、故意に他人の業 務に係る商品と混同を生じさせたとしても、商標法第51 条第1項の審判(商標権者の 不正使用による商標登録の取消しの審判)により、当該商標登録が取り消されることは ない。

  • 51条の取消し審判は、禁止権の範囲による商標の使用をした場合に該当する。色違い類似商標の使用は、専用権の範囲による商標の使用のため、51条の取消し審判には該当しない(70条3項)

商標登録の取消しの審判の審決に対しての訴えは、東京高等裁判所の専属管轄とし、 特許庁長官を被告としなければならない。

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  • 当事者対立構造をとることができるため、被告は取消し審判の請求人又は被請求人となる(63条2項で読み替え準用する特179条)

【商標】10

マドリッド協定の議定書に基づく特例のうち、議定書第6条(4)に規定する、いわゆ る「セントラルアタック」により国際登録が取り消された後の商標登録出願に関連して、 次のうち、誤っているものは、どれか。

当該商標登録出願が、国際登録に係る商標権であったものについての音の商標に係る 商標登録出願であって、商標法第5条第4項に規定するその商標の詳細な説明が、商標 登録を受けようとする音の商標の内容を特定するものでないときは、それを理由として 当該出願は拒絶される。

  • 68条の34第2項の規定により、15条3号については審査される。
  • 5条4項に規定する商標の詳細な説明の記載が、商標登録を受けようとする商標を特定するものでないとき、拒絶される(15条3号、5条4項、5項)

当該商標登録出願が、国際登録に係る商標権であったものについての商標登録出願で あっても、商標法第15 条第2号にいう条約の規定により商標登録をすることができない ものであるときは、それを理由として当該出願は拒絶される。

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  • 68条の34第2項の規定により、15条2号については審査されない。
  • 無効理由である(46条1項2号)

当該商標登録出願について、商標権の設定の登録がされた場合、当該商標権の存続期 間は、当該出願に係る国際登録の国際登録の日(当該国際登録の存続期間の更新がされ ているときは、直近の更新の日)から10 年をもって終了する。

  • 68条の36第1項の規定の通りである。

当該商標登録出願が、パリ条約第4条の規定による優先権が認められていた国際登録 出願に係るものであるときは、その商標登録出願につきその優先権による利益を享受す るために、出願人は、その旨並びに第一国出願をしたパリ条約の同盟国の国名及び出願 の年月日を記載した書面を特許庁長官に提出する必要はない。

  • 68条の32第3項の規定の通りである。

当該商標登録出願が、国際登録の日にされたものとみなされるためには、国際登録が 取り消された日から3月以内に商標登録出願をしなければならないが、議定書第15 条 (5)(b)に規定する、議定書の廃棄後の商標登録出願が、国際登録の日にされたも のとみなされるためには、廃棄の効力が生じた日から2年以内に商標登録出願をしなけ ればならない。

  • 68条の32第2項1号、68条の33第2項の規定の通りである。