令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 商標 4~6

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【商標】4

防護標章に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

(イ)

防護標章登録に基づく権利は、その防護標章登録に基づく権利を伴う商標権を指定商 品ごとに分割したときは消滅し、当該商標権を移転したときは、その商標権に従って移 転する。

  • 66条1項、2項の規定の通り。

(ロ)

地域団体商標の商標権者は、その登録商標を商標権者自身が使用をしていなくても、 その構成員の業務に係る指定商品を表示するものとして当該登録商標が需要者の間に広 く認識されている場合には、その登録商標と同一の標章について、防護標章登録を受け ることができる。

  • 64条3項の規定通りである。

周知性を獲得する者の要件

7条の2 地域団体商標

  • 自己又はその構成員の業務に係る商品を表示するものとして周知性があること。

64条1項 防護標章登録

  • 自己の業務に係る指定商品を表示するものとして周知性があること。
  • 使用権者の業務に係るものとして周知性があってもダメである。

64条3項 地域団体商標に係る防護標章登録

  • 自己又はその構成員の業務に係る指定商品を表示するものとして周知性があること。

(ハ)

防護標章登録を受けるためには、他人が当該登録商標の使用をすることにより商品又 は役務の出所の混同を生ずるおそれがあることを必要とし、当該登録商標に係る指定商 品が2以上ある場合には、そのうちの1又は2以上の商品について「混同のおそれ」が あれば足りる。

  • 商標権に係る指定商品が2以上ある場合には、そのうちの1又は2以上の商品について「混同のおそれ」があれば足り、必ずしも指定商品の全てについて、ある非類似商品と混同を生じることを要しない(青本 64条)

(ニ)

防護標章登録の要件(商標法第64 条)を具備しないことを理由とする無効の審判は、 その防護標章登録に基づく権利の設定の登録の日から5年を経過した後も、請求するこ とができる。

  • 5年の除斥期間は、使用による信用が化体するための期間として定められている(47条)
  • 防護標章登録は、使用を前提としないため、5年の除斥期間は規定されていない。

(ホ)

防護標章登録に基づく権利の設定の登録を受ける者、及び、防護標章登録に基づく権 利の存続期間を更新した旨の登録を受ける者は、商標法第65 条の7に規定される登録 料を分割して納付することができない。

【商標】5

設定の登録前の金銭的請求権(商標法第13 条の2)に関し、次のうち、正しいものは、 どれか。 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

商品に係る登録商標についての防護標章登録出願は、その登録商標に係る指定商品及 びこれに類似する商品以外の商品又は指定商品に類似する役務以外の役務を指定商品又 は指定役務とするものであるから、その防護標章登録出願人は、当該出願に係る標章と 同一の商標の使用をした者に対し、当該使用により生じた業務上の損失に相当する額の 金銭の支払を請求することができない。

×

×

  • 商標に関する規定の準用において、損害額の推定等の規定(38条)を準用していない。よって、使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払いを請求することができない。 ←金銭的請求権を行使できるかどうかを問うているため、解説として間違っている。
  • 防護商標登録出願は、13条の2の金銭的請求権の規定を準用しているため(68条1項)、要件を満たせば、権利行使することができる。

設定の登録前の金銭的請求権に基づく金銭の支払の請求に係る訴訟の終局判決が確定 した後に、当該商標登録を無効にすべき旨の審決が確定し、その金銭的請求権が初めか ら生じなかったものとみなされた場合、当該訴訟の当事者であった者は、当該終局判決 に対する再審の訴えにおいて、当該無効審決が確定したことを主張して、既に支払った 金銭の返還を請求することができる。

×

  • 38条の2第1号の規定の通り、既に支払った金銭の返還を請求することはできない。

設定の登録前の金銭的請求権は商標権の設定の登録があった後でなければ行使するこ とができないところ、当該金銭的請求権に基づく金銭の支払の請求に係る訴訟は商標権 侵害訴訟ではないから、当該訴訟において、被告は、商標権者である原告に対し、当該 商標権に係る商標登録が無効であることを抗弁として主張することは商標法上認められ ていない。

×

  • 39条により、特104条の3第1項の規定が準用されているため、無効の抗弁を主張することは商標法上認められている。

商標登録出願人が、商標登録出願をした後に当該出願に係る商標を使用していない場 合であっても、当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その 警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について、当該出 願に係る商標の使用をした者に対し、常に、当該使用により生じた業務上の損失に相当 する額の金銭の支払を請求することができる。

×

  • 商標法は、業務上の信用を保護するためのものであり、使用していない商標については保護されず、金銭的請求権を行使することはできない(13条の2第1項)
  • 登録商標に顧客吸引力が全く認められず、登録商標に類似する標章を使用することが第三者の商品の売り上げに全く寄与していないことが明らかなときは、得べかりし利益としての実施料相当額の損害も生じていないというべきである(小僧寿し事件 H9. 3. 11)

商標登録出願人は、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提 示して警告をしたときは、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品 又は指定役務について、当該出願に係る商標の使用をした者のみならず、当該商標に類 似する商標の使用をした者に対しても、当該使用により生じた業務上の損失に相当する 額の金銭の支払を請求することができる。

×

  • 金銭的請求権について、登録商標に類似する商標の使用、又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用については、規定されていない。←13条の2第1項では規定されていない。
  • そのため、商標に類似する商標の使用をした者に対して、金銭的請求権を行使することができない。
  • 金銭的請求権の規定は、侵害とみなす行為(37条)を準用している(13条の2第5項)ため、商標登録出願に係る商標に類似する商標を使用した者に対しても、金銭的請求権を行使することができる。

【商標】6

商標登録出願の手続等に関し、次の(イ)~(ニ)のうち、誤っているものは、いくつあるか。 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

(イ)

商標登録出願人は、商標登録出願が審査、審判又は再審に係属している場合であって、 かつ、当該商標登録出願について商標法第76 条第2項の規定により納付すべき手数料を 納付している場合に限り、2以上の商品又は役務を指定商品又は指定役務とする商標登 録出願の一部を1又は2以上の新たな商標登録出願とすることができる。

×

  • 76条2項の規定による手数料とは、出願手数料。H30年改正で追加。
  • 商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合についても、分割出願可能(10条1項)であるため、問題文の期間に限らない。

(ロ)

同一の商品について使用をする同一の商標について同日に2以上の商標登録出願があ り、一の商標登録出願人を定めることについて商標登録出願人の間で協議が成立しなか ったときは、いずれの商標登録出願人も、その商標について商標登録を受けることがで きない。

×

  • 特許庁長官が行う公正な方法によるくじにより定めた一の商標登録出願人のみが商標登録を受けることができる(8条5項)

(ハ)

特許庁長官は、商標登録出願が商標法第5条の2第1項各号(出願日の認定要件)の 一に該当することを理由に当該商標登録出願について補完をすべきことを命じた者が指 定された期間内にその補完をしたときは、当該商標登録出願に係る手続補完書を提出し た日を商標登録出願の日として認定しなければならない。

  • 5条の2第1項各号、4項の規定通りである。

(ニ)

特許庁長官は、商標登録出願があったときは、出願公開をしなければならず、出願公 開においては、願書に記載した商標並びに指定商品又は指定役務を、例外なく商標公報 に掲載しなければならない。

×

  • 商標法には、出願公開(特64条)という制度はない。特許法と異なる。補償金請求権(特65条)と対になる制度である金銭的請求権(13条の2)はあるが、出願公開された後ではなく、商標登録出願をした後が要件となる。
  • 出願公開では、公開されない事項があるのに対し(64条2項但書き)、商標公報の掲載に関しては、掲載されない事項はない(18条3項)。出願書類及びその付属物件については縦覧に供しない場合がある(18条4項但書き)