令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 19、20

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【特許・実用新案】19

訂正審判、特許無効審判における訂正の請求に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、誤っている ものは、いくつあるか。

(イ)

特許無効審判の審決取消訴訟において、訂正の請求がされた一群の請求項のうち一部 の請求項についての審決の取消しの判決が確定したときは、審判官は、審理を行うに際 し、当該一群の請求項のうちその他の請求項についての審決を取り消さなければならな い。

  • 181条2項の規定通り。

(ロ)

外国語書面出願に係る特許の特許無効審判において、誤記又は誤訳の訂正を目的とし て訂正を請求する際には、その訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図 面とみなされる外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしなければならな い。

×

  • 外国語書面の範囲内においてしなければならない(134条の2第9項で、126条5項を準用)

(ハ)

特許無効審判において、訂正の請求が認容されて削除されることとなった請求項に対 してされていた特許無効審判の請求は、その特許無効審判の請求が不適法な請求である ため、却下される。

×

  • この場合、無効審判の請求の棄却審決がされる(157条)
  • 不適法な審判請求の審決による却下(135条)とは、在外者が審判請求をすることや請求期間経過後に審判請求することが挙げられる。

(ニ)

訂正審判は、2以上の請求項に係る願書に添付した特許請求の範囲の訂正をする場合 には、請求項ごとに(当該請求項の中に一群の請求項があるときは、当該一群の請求項 ごとに)請求をしなければならず、特許権を単位として請求をすることはできない。

×

  • 訂正審判は、二以上の請求項に係る願書に添付した特許請求の範囲の訂正をする場合には、請求項ごとに請求をすることができる(126条3項)のであって、請求項ごとにしなければならないわけではない。また、特許権を単位として請求をすることができないという規定もない。

(ホ)

特許権者は、質権者及び特許法第80 条第1項(無効審判の請求登録前の実施による通 常実施権)の規定による通常実施権者があるときは、両者の承諾を得た場合に限り、特 許無効審判において訂正の請求をすることができる。

×

  • 80条1項の通常実施権者の承諾は必要ない。
  • 専用実施権者、質権者、35条1項の通常実施権者、77条4項の通常実施権者、78条1項の通常実施権者がある場合、承諾が必要(134条の2第9項で準用する127条)

注意点

  • 公開されている解答は、誤っているものが3つとのことである。どれかが間違っているはずであるが、よく分からない。

【特許・実用新案】20

特許法及び実用新案法に規定する罰則等に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

特許権者、専用実施権者又は通常実施権者は、物の特許発明におけるその物又はその 物の包装にその物の発明が特許に係る旨の表示を付することが義務付けられている。

×

  • 努力目標(187条)

特許が物の発明についてされている場合において、当該特許権につき適法に実施する 権利を有さない者が、その物を業としての譲渡のために所持する行為を行った場合、懲 役や罰金に処せられることはない。

×

  • 関節侵害の行為(101条3号)であるため、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はこれを併科する(196条の2)

物の特許発明におけるその物であれば、当該特許を無効にすべき旨の審決が確定した 後に、「特許」の文字と当該特許の特許番号をその物に付して譲渡しても、懲役や罰金 に処せられることはない。

×

  • 虚偽表示した物を譲渡する行為は禁止されており(188条2号)、違反した場合、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(198条)

実用新案権特許権と異なり実体審査を経ずに登録されるから、実用新案法には、詐 欺の行為により実用新案登録を受けた者を、懲役や罰金に処する旨の規定はない。

×

  • 実用新案において、詐欺の行為により実用新案登録を受けた者は、一年以下の懲役又は100万円以下の罰金(実57条)

特許権の侵害に係る訴訟において、被告製品が当該特許権を侵害するとして敗訴した 被告が、その訴訟の終局判決が確定した後に、同一の被告製品を型番のみを変更して販 売した場合、懲役や罰金に処せられることがある。

  • 特許権の侵害であれば、懲役や罰金に処せられる(196条)
  • 問題の意図がよく分からない。民事事件の後で、刑事事件として取り上げられることがあるかを問いたかったのか?

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 16~18

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【特許・実用新案】16

特許法及び実用新案法に規定する特許料等に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、誤っているも のは、いくつあるか。

(イ)

特許権の設定の登録の日から存続期間の満了までの各年分の特許料について、第1年 から第3年までの各年分の特許料は一時に納付しなければならないが、第4年以後の各 年分の特許料は、前年に納付しなければならず、数年分を一時に納付することはできな い。

×

  • 数年分を一時に納付することもできる(青本 108条2項)

(ロ)

特許について特許権者と実施許諾について交渉途中の者は、特許権者が実施許諾を明 確に拒絶している場合でも、当該特許の特許料を納付することができる。

  • 利害関係人その他特許料を納付するべき者以外の者は、することができる(110条1項)

(ハ)

特許を無効にすべき旨の審決から2年以上経過して当該審決が確定した場合、特許料 を納付した者は、当該審決が確定した日から6月を経過する前であれば、既納の特許料 のうち、当該審決がなされた年の翌年以後の各年分の特許料の返還を受けることができ る。

×

×

  • 6月を経過した後であっても、既納の特許料の返還を請求する年の翌年以後の各年分の特許料の返還を受けることができる。
  • 既納の特許料は、特許無効審判の審決が確定した年の翌年以後の各年分の特許料を、請求により返還する(111条1項2号)
  • 審決が確定した日から6月を経過した後は、請求することができない(同条2項)
  • 審決がなされた年の翌年以後ではない。

(ニ)

特許法には、第1年から第3年までの各年分の特許料は、特許をすべき旨の査定の謄 本の送達があった日から30 日以内に一時に納付しなければならない旨の規定があり、実 用新案法には、第1年から第3年までの各年分の登録料は、実用新案登録出願と同時に (出願の変更又は出願の分割があった場合にあっては、その出願の変更又は出願の分割 と同時に)一時に納付しなければならない旨の規定がある。

  • 108条1項、及び実32条1項の規定通り。

(ホ)

特許料の納付は、経済産業省令で定めるところにより、特許印紙又は現金をもってす ることができる。

  • 107条5項の規定通り。

【特許・実用新案】17

特許法第29 条の2(いわゆる拡大された範囲の先願)及び第39 条(先願)に関し、次 のうち、誤っているものは、どれか。 ただし、特に文中に示した場合を除いて、特許出願は、外国語書面出願、国際出願に係 る特許出願、特許出願の分割に係る新たな特許出願、出願の変更に係る特許出願又は実用 新案登録に基づく特許出願ではなく、取下げ、放棄又は却下されておらず、査定又は審決 が確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる優先権の主張も伴わないもの とする。 また、特に文中に示した場合を除いて、実用新案登録出願は、国際出願に係る実用新案 登録出願、実用新案登録出願の分割に係る新たな実用新案登録出願、出願の変更に係る実 用新案登録出願ではなく、実用新案登録に基づく特許出願がされておらず、取下げ、放棄 又は却下されておらず、審決が確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる 優先権の主張も伴わないものとする。 さらに、特に文中に示した場合を除いて、発明及び考案については、いずれも出願人が 自らしたものとし、発明イと考案イは同一であるとする。

甲は、特許請求の範囲に発明イが記載された特許出願Aを出願し、乙は、実用新案登 録請求の範囲に考案イが記載された実用新案登録出願Bを、特許出願Aと同日に出願し た。甲と乙の協議が成立しない場合、甲は特許出願Aに記載された発明イについて特許 を受けることができず、乙は実用新案登録出願Bに記載された考案イについて実用新案 登録を受けることができない。

  • 39条3項の規定通り。

甲は、特許請求の範囲に発明イが記載され、明細書及び図面に発明イ及びロが記載さ れた特許出願Aを出願し、特許出願Aの出願の日後に、乙が、特許請求の範囲に発明ロ を記載した特許出願Bを出願した。この場合、甲が特許出願Bの審査請求後に特許出願 Aの特許請求の範囲を発明ロに補正したとき、当該補正後の特許出願Aは特許出願Bを 先願として特許法第39 条の規定により拒絶されることはない。

  • 補正をしたとしても、出願Aの出願日は、出願Bの出願日より早いため、出願Aは、出願Bを引例として、39条で拒絶されることはない49条2号

甲は、実用新案登録請求の範囲と考案の詳細な説明に考案イが記載された実用新案登 録出願Aを出願した。さらに、甲は、実用新案登録出願Aの出願の日後に、特許請求の 範囲に発明イが記載された特許出願Bを出願し、その後、実用新案登録出願Aの実用新 案掲載公報が発行された。この場合、特許出願Bは、実用新案登録出願Aをいわゆる拡 大された範囲の先願として特許法第29 条の2の規定により拒絶されることはない。

  • 出願人同一のため、29条の2但書きの規定により拒絶されることはない。

甲は、特許請求の範囲に発明イが記載された特許出願Aを出願し、乙は、実用新案登 録請求の範囲に考案イが記載された実用新案登録出願Bを、特許出願Aと同日に出願し、 丙は、特許請求の範囲に発明イが記載された特許出願Cを、特許出願A及び実用新案登 録出願Bの出願の日後に出願した。この場合、甲と乙の協議が成立しないことから特許 出願Aについて拒絶をすべき旨の査定が確定したとき、特許出願Cは特許出願Aを先願 として特許法第39 条の規定により拒絶されることはない。

×

  • 出願Aと出願Bは同日出願で、協議不成立のため拒絶された場合(39条2項)、先願の地位が残る(同条5項但書き)
  • そのため、出願Cは、出願Aを39条の引例として、拒絶される(49条2号)

甲は、特許請求の範囲に発明イが記載され、明細書及び図面に発明イ、ロ及びハが記 載された特許出願Aを分割して特許請求の範囲に発明ロが記載され、明細書及び図面に は発明イ、ロ及びハが記載された新たな特許出願Bをした。その後、特許出願Aは、出 願公開されることなく拒絶をすべき旨の査定が確定し、特許出願Bは出願公開された。 乙は、特許請求の範囲、明細書及び図面に発明ハが記載された特許出願Cを、特許出願 Aの出願の日後であって、特許出願Bの出願の日前にした。この場合、特許出願Cは、 特許出願Aをいわゆる拡大された範囲の先願として特許法第29 条の2の規定により拒 絶されることはなく、特許出願Bをいわゆる拡大された範囲の先願として特許法第29 条の2の規定により拒絶されることもない。

  • 出願Aは出願公開されていないため、29条の2の引例となりえない。
  • 分割出願Bは、29条の2の規定における他の特許出願について、遡及効がないため(44条2項但書き)、出願Cの日前の出願とみなされず、29条の2の引例となりえない。

【特許・実用新案】18

特許異議の申立てに関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。

(イ)

同一の特許について、訂正審判が特許庁に係属中に特許異議の申立てがされたときは、 当該訂正審判と当該特許異議の申立てについての審理は、特別の事情がある場合を除き、 併合するものとする。

×

  • 訂正審判と特許異議の申立てとの審理併合は規定されていない。
  • 同一の特許権に係る二以上の特許異議の申立てについては、その審理は、特別の事情がある場合を除き、併合するものとする(120条の3)
  • 審理併合の規定がある(154条1項)。訂正審判と無効審判が併合される場合があるかなと思ったが、訂正審判と無効審判が同時に審理されることはない(126条2項、)。訂正審判継続中に、無効審判を請求できない旨の規定は見当たらない。
  • 青本にも、審理併合は無効審判と無効審判との併合について記載しており(青本 154条)、別種の審理を併合することまで、考えていないと思う。

(ロ)

2以上の請求項に係る特許について、請求項ごとに特許異議の申立てがされた場合、 特許異議の申立てがされた請求項以外の請求項について、特許法第120 条の5第2項の 規定による訂正の請求をすることはできない。

×

  • 特許異議の申立てがされた請求項以外の請求項について、訂正の請求をすることができないという制約はない(120条の5第2項)

(ハ)

2以上の請求項に係る特許について、その全ての請求項に対し特許異議の申立てがさ れた場合、その一部の請求項についてのみ特許を取り消すべき旨の決定が確定したとき であっても、特許異議の申立てがされた全ての請求項に係る特許権が、初めから存在し なかったものとみなされる。

×

  • 取消決定(114条3項)は、請求項ごとにされる(185条)。全ての請求項に係る特許権が、初めから存在しなかったものとみなされるわけではない。
  • 特許異議の申立てについての決定は、特許異議申立て事件ごとに確定し(120条の7本文)、請求項ごとに特許異議申し立てがあれば、一群の請求項、又は請求項ごとに確定する(120条の7但書き1号、2号)のであれば、全ての請求項に対して申立てされた場合、全ての請求項について、取消決定がされるような気もするが、それは特許権者にとって酷な気もする。

(ニ)

特許法には、特許法第120 条の5第2項の規定による訂正の請求がされた場合におい て、その特許異議申立事件において先にした訂正の請求があるときは、後の訂正の請求 は、先の訂正の請求に係る訂正の請求書に添付された訂正した明細書、特許請求の範囲 又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない旨の規定がある。

×

  • 先にした訂正の請求があるときは、取り下げられたものとみなす(120条の5第7項)

(ホ)

特許法第120 条の5第1項の規定による通知(いわゆる取消理由通知)において指定 された期間内に特許権者からされた訂正の請求について、特許異議申立人から意見書が 提出された場合、審判長は、その意見書の副本を特許権者に送付し、相当の期間を指定 して、意見書を提出する機会を与えなければならない。

×

  • 無効審判において、請求書の補正がある場合、被請求人は、答弁書を提出する機会を与えられる(134条2項)が、それに相当する規定は、特許異議申立てにはない。

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 13~15

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【特許・実用新案】13

特許出願の手続及び出願公開に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつある か。

(イ)

発明イについての特許を受ける権利が甲及び乙の共有に係る場合であって、甲が単独 で発明イについての特許出願Aを行った場合、特許庁長官は、特許法第38 条の規定に 違反していることを理由として、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命 ずることができる。

×

  • 38条違反は拒絶理由(49条2号)のため、拒絶理由を通知する(50条)
  • 手続き補正命令は、主体適格違反、方式違反、手数料未納の場合にされる(17条3項)

(ロ)

出願人甲は、特許出願Aの出願日から3年経過後に、その出願の一部を分割して新た な特許出願Bとした。特許出願Bの出願の日から30 日経過した後は、特許出願Bにつ いて出願審査の請求をすることができる場合はない。

×

  • 正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間に限り、出願審査の請求をすることができる(48条の3第7項で準用する同条5項)

(ハ)

審査官は、特許出願について拒絶の理由を発見しないときは、特許をすべき旨の査定 をしなければならず、当該特許をすべき旨の査定には理由を付さなければならない。

  • 51条、52条1項の規定の通り。

(ニ)

物の発明に係る特許権Aの特許権者甲は、特許権Aの設定の登録前に当該発明に係る 物を業として使用していた乙に対して、特許権Aの設定の登録後に、特許法第65 条第 1項に規定する補償金の請求権を行使した。乙が特許権Aの設定の登録後も引き続き当 該発明に係る物を業として使用した場合に、甲は、特許権Aの侵害を理由として損害賠 償の請求をすることができる場合がある。

  • 補償金請求権の行使は、特許権の行使を妨げない(65条4項)

(ホ)

外国語書面出願の出願人甲は、外国語書面の日本語による翻訳文を特許庁長官に提出 したが、当該翻訳文には、外国語書面に記載した事項の範囲内にない事項が含まれてい た。その後、当該外国語書面に記載した事項の範囲内にない事項について補正されず審 査が行われた場合、審査官は、当該翻訳文に外国語書面に記載した事項の範囲内にない 事項が含まれていることを理由として、出願人甲に対して拒絶の理由を通知しなければ ならない。

  • 49条6号の規定通り。

【特許・実用新案】14

特許を受ける権利等、仮専用実施権及び仮通常実施権に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正 しいものは、いくつあるか。

(イ)

使用者等が職務発明の発明者に対して与える表彰状等のように発明者の名誉を表する だけのものであっても、特許法第35 条第4項に規定される「相当の利益」に含まれる。

×

  • 相当の利益とは、金銭上の対価の他、留学の機会やストックオプションの付与等の金銭以外の経済上の利益も含まれる。
  • しかし、経済的価値を有さないと評価されるものは、相当の利益に含まれない。

(ロ)

同一の者から承継した同一の発明及び考案についての特許を受ける権利及び実用新案 登録を受ける権利について同日に特許出願及び実用新案登録出願があったときは、時、 分を考慮して最先の出願をした者以外の者の承継は、第三者に対抗することができない。

×

  • 同日の権利の承継について、時、分は考慮されず、協議命令がでる(34条3項)
  • 実用新案は、特許のように、実体審査を行わないので、協議命令はでないような気もする。

(ハ)

共有に係る仮通常実施権についてその持分を譲渡する場合には、各共有者は、他の共 有者の同意を得なければならない。

×

  • 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持ち分を譲渡することができない(33条3項)。共有に係る仮通常実施権においても同様(34条の3第12項で、33条3項を準用)

(ニ)

仮専用実施権者は、特許を受ける権利を有する者の承諾を得た場合に限り、その仮専 用実施権に基づいて取得すべき専用実施権について、他人に仮通常実施権を許諾するこ とができる。

  • 34条の2第4項の規定通り。

(ホ)

仮専用実施権者によって許諾された仮通常実施権は、その特許出願について特許権の 設定の登録があったとき、その特許出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下され たとき又はその特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき に消滅するが、その仮専用実施権が消滅したときには消滅しない。

×

  • 34条の2第11項の規定通り。

【特許・実用新案】15

特許出願に関する優先権に関し、次のうち、正しいものは、どれか。 ただし、特に文中に示した場合を除いて、特許出願は、外国語書面出願、国際出願に係 る特許出願、特許出願の分割に係る新たな特許出願、出願の変更に係る特許出願又は実用 新案登録に基づく特許出願ではなく、取下げ、放棄又は却下されておらず、査定又は審決 が確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる優先権の主張も伴わないもの とし、文中に記載した優先権の主張は取り下げられていないものとする。

特許法第41 条第1項の規定による優先権の主張を伴う特許出願をする場合において、 先の出願について仮通常実施権を有する者があるときには、当該特許出願の際に、当該 仮通常実施権を有する者の承諾を得なければならない。

×

  • 仮専用実施権を有する者があるときは、承諾を得なければならない(41条1項但書)
  • 仮通常実施権を有する者は、原則、優先権主張を伴う特許出願に係る特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権について仮通常実施権を有する(34条の3第5項)。そのため、仮専用実施権の場合のように、承諾を必要としない。

甲は、パリ条約の同盟国である国Xにおいてした特許出願Aの出願日から1年以内に、 特許出願Aに係る発明と同一の発明について、パリ条約第4条D(1)の規定により優 先権を主張して、日本国に特許出願Bをした。この場合、国Xが、特許法第43 条第2 項に規定する書類(いわゆる優先権書類)を日本国と電磁的方法により交換することが できる国でなくとも、甲は、優先権書類を特許庁長官に提出したものとみなされること がある。

  • よくわからない。優先権書類の提出擬制は、43条5項のみの規定だと思う。

パリ条約の同盟国又は世界貿易機関の加盟国のいずれにも該当しておらず、日本国民 に対し、日本国と同一の条件により優先権の主張を認めることとしている国Xの国民が 国Xにおいてした出願に基づく優先権、及び日本国民又はパリ条約の同盟国の国民若し くは世界貿易機関の加盟国の国民が国Xにおいてした出願に基づく優先権は、パリ条約 第4条の規定の例により、日本国における特許出願について、これを主張することがで きる場合はない。

×

  • 43条の3に規定するパリ条約の例による優先権を主張することができる。

意匠登録出願を基礎として、特許法第41 条第1項の規定による優先権の主張を伴う 特許出願をすることができる。

×

  • 意匠登録出願を基礎として、国内優先権を主張できる旨の規定はない(41条1項)

甲は、特許出願Aをした後、特許出願Aを実用新案登録出願Bに変更した。特許出願 Aの出願の日から1年以内であって、実用新案登録出願Bについて実用新案法第14 条 第2項に規定する設定の登録がされていない場合に、甲は、実用新案登録出願Bの実用 新案登録の請求の範囲に記載された発明に基づく特許法第41 条第1項の規定による優 先権の主張を伴う特許出願Cをすることができる。

×

  • 変更を伴う出願に基づいて優先権の主張を伴う特許出願をすることはできない(41条1項2号)

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 10~12

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【特許・実用新案】10

特許無効審判、実用新案登録無効審判又は訂正審判に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、誤っ ているものは、いくつあるか。

(イ)

外国語書面出願に係る特許に対しては、特許法第17 条の2第3項に規定する要件(い わゆる新規事項の追加の禁止)を満たしていないこと、同法第36 条第6項第4号に規定 する要件(いわゆる特許請求の範囲の記載に関する委任省令要件)を満たしていないこ と、同法第37 条に規定する要件(発明の単一性の要件)を満たしていないことを理由と する特許無効審判は、いずれも請求することはできない。

×

  • 新規事項追加違反は、外国語書面出願では適用されない(123条1項1号)

(ロ)

訂正審判は、特許権を放棄した後においても、請求することができる場合がある。

  • 126条8項本文に規定する通り。放棄は消滅に含まれる。

(ハ)

実用新案登録無効審判の請求は、被請求人から答弁書の提出があった後は、いかなる 場合においても、相手方の承諾を得なければその審判の請求を取り下げることができな い。

×

  • 特許の場合、155条2項の規定通り。
  • 実用新案の場合、原則、39条の2第2項の規定通り、相手方の承諾を得なければ審判請求を取り下げることができない。
  • 例外として、相手方が特46条の2の特許出願する場合、その通知を受けた日から30日以内に限り、審判請求を取り下げることができる(39条の2第3項)

(ニ)

特許無効審判において、審理の終結が当事者及び参加人に通知されることなく、審決 がされることがある。

×

  • 審決は、審理の終結の通知を発した日から20日以内にしなければならない(156条4項)。そのため、審理の終結の通知がされることなく、審決がされることはない。

(ホ)

特許無効審判の請求書の副本を被請求人に送達する前に当該請求書を補正する手続補 正書が提出された場合、当該補正が請求書に記載された請求の理由の要旨を変更するも のであっても、審判長は、当該補正が審理を不当に遅延させるおそれがないことが明ら かなものであるときは、当該補正を許可することがある。

×

  • 特許無効審判の請求書の補正(131条の2第2項)の許可は、その補正に係る手続補正書が、特許無効審判の請求書の副本が被請求人に送達(134条1項)する前に提出されたときは、これをすることができない(131条の2第3項)

【特許・実用新案】11

特許権及び実施権に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

甲が自己の特許権の全部の範囲について、乙に通常実施権を許諾した後は、丙に専用 実施権を設定することはできない。

×

  • 通常実施権(78条1項)は、債権的権利であり、許諾したからといって、専用実施権を設定することができないわけではない。

甲が自己の特許権について、乙に専用実施権を設定し、その登録がされている場合、 乙の専用実施権は、実施の事業とともにする場合又は甲の承諾を得た場合に限り移転す ることができる。

×

  • 相続その他の一般承継による場合についても、移転をすることができる(77条3項)

甲が自己の特許権の全部の範囲について、乙に専用実施権を設定し、その登録がされ ている場合、甲は、当該特許権を侵害している丙に対して差止請求権の行使をすること ができない。

×

  • 特許権者は、専用実施権を設定していたとしても、差止請求権を行使することができる(100条1項)
    • 専用実施権を設定したことにより得られる金額が減る可能性がある。
    • 専用実施権が消滅した後、特許発明を実施しようとした場合、市場が荒らされている場合がある。
    • 請求権を行使できないという規定はない。

甲が自己の特許権について、乙に専用実施権を設定し、その登録がされている場合、 丙に対して、当該特許権についての専用実施権を設定することができる場合はない。

×

  • 専用実施権を設定する範囲が異なれば、専用実施権を設定することができる(77条1項)

甲が自己の特許権の全部の範囲について、乙及び丙に対して、両者の共有とする専用 実施権を設定し、その登録がされている場合、乙は、契約で別段の定めをした場合を除 き、甲及び丙の同意を得ることなく、その特許発明の実施をすることができる。

×

  • 専用実施権において、特許権の共有の規定を準用してる(77条5項で準用する73条2項)

【特許・実用新案】12

特許法に規定する審判又は再審に関し、次のうち、誤っているものは、どれか。

特許異議の申立てに係る特許を取り消すべき旨の決定(取消決定)又は審決が確定し た日から3年を経過した後であっても、再審を請求することができる場合がある。

  • 審決が前にされた確定審決と抵触することを理由とする再審の請求は、事柄の性質上、請求期間は無制限である(青本 173条6項)

審判長は、特許無効審判の確定審決に対する再審においては、事件が審決をするのに 熟したときは、審理の終結を当事者及び参加人に通知しなければならない。

×

  • 特許無効審判の再審において、審理終結通知の規定は準用されている(174条3項で準用する156条1項)
  • 審決予告は非準用(174条3項で164条の2非準用)

特許権者甲がその特許権について乙のために質権を設定し、その後丙が請求した特許 無効審判で甲と丙とが共謀し、虚偽の陳述によって審判官を欺いて特許を無効にすべき 旨の審決をさせ、その審決が確定した場合において、乙は甲のみを被請求人としてその 確定審決に対し再審を請求することができる。

×

  • いわゆる詐害審決に対する再審は、その審決における審判の請求人と被請求人を、共同被請求人として請求しなければならない(172条2項)

請求人が申し立てない請求の趣旨については、審判及び再審のいずれにおいても、審 理することができない。

  • 153条3項の規定通り。審判においては、請求人が申し立てない請求の趣旨については、審理することができない。

再審の確定審決に対し、当事者又は参加人は、再審を請求することができる。

  • 171条1項の規定通り。確定審決に対しては、当事者又は参加人は、再審を請求することができる。
  • 確定審決とは、再審の確定審決も含む(青本 171条1項)
  • 参加人は、当事者参加人(148条1項)、及び補助参加人(同条3項)を含む。

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 7~9

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【特許・実用新案】7

特許法に規定する審判に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。

(イ)

拒絶査定不服審判において口頭審理が行われる場合、その口頭審理は必ず公開して行 われる。

×

  • 原則、口頭審理は公開(145条5項本文)
  • 公序良俗に反する場合、公開しない(同項但書き)
  • 侵害訴訟の場合、営業秘密にかかわるときは、公開停止される場合がある(105条の7)

(ロ)

訂正審判は、3人又は5人の審判官の合議体が行い、合議体の合議は、過半数により 決する。

  • 規定通り(136条1項)

(ハ)

特許無効審判において、審判長は、当事者又は参加人が申し立てない理由について審 理したときであっても、その審理の結果を当事者及び参加人に通知し、相当の期間を指 定して、意見を申し立てる機会を与えない場合がある。

×

  • 必ず与えられる(153条2項)

(ニ)

審判事件に係る手続(審判の請求を除く。)において、不適法な手続であってその補 正をすることができないものについては、審決をもってその手続を却下することができ る。

×

  • 審判長は、決定をもって手続きを却下することができる(133条の2第1項)

(ホ)

特許を受ける権利の共有者が共同でした出願に対し、拒絶をすべき旨の査定がなされ、 拒絶査定不服審判の請求をする場合、代表者を定めて特許庁に届け出ていたときは、出 願人全員が共同して審判の請求をしなくとも、代表者が審判の請求をすることができる。

×

  • 拒絶査定不服審判は不利益事由であり、出願人全員が共同して審判請求しなければならない(14条)

【特許・実用新案】8

特許法に規定する手続に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。

(イ)

特許庁長官は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、請求により又は職権で、特許 出願について出願審査の請求をすることができる期間を延長することができる。

×

  • 出願審査の請求は、4条の規定事項ではない。

(ロ)

日本国内に住所又は居所を有する者であって手続をするものの委任による代理人は、 特別の授権を得なければ、特許法第41 条第1項に規定する優先権の主張を伴う特許出 願をすることはできない。

  • 9条の規定通り。

(ハ)

特許庁長官又は審判長は、手続をする者の代理人がその手続をするのに適当でないと 認めるときは、その改任を命ずることができる。また、改任の命令をした後に当該適当 でないと認める代理人特許庁に対してした手続は、特許庁長官又は審判長によって却 下される場合がある。

×

  • 審判官が解任を命じる。13条2項、4項の規定通り。
  • 審判官は、受継命令(23条1項)、及び受継の擬制(同条2項)を行う。

(ニ)

特許庁長官又は審判官は、中断した審査、特許異議の申立てについての審理及び決定、 審判又は再審の手続を受け継ぐべき者が受継を怠ったときは、申立てにより又は職権で、 相当の期間を指定して、受継を命じなければならず、指定した期間内に受継がないとき は、受継を命じた日に受継があったものとみなすことができる。

×

  • 指定期間の経過後に受継があったものとみなすことができる(23条2項)

(ホ)

拒絶理由の通知に対する意見書を特許出願人が郵便により提出し、日本郵便株式会社 の営業所に差し出した日時を郵便物の受領証により証明できない場合、その郵便物の通 信日付印により表示された日時のうち日のみが明瞭であって時刻が明瞭でないときは、 当該意見書は、表示された日の午後12 時に特許庁に到達したものとみなされる。

×

  • 表示された日の午前12時に到達したものとみなされる。 19条の規定通り。

【特許・実用新案】9

特許権等について、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものの組合せは、どれか。

(イ)

特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなけ ればならないが、願書に添付した明細書の記載、図面及び要約書の記載を考慮して、特 許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。

×

  • 要約書の記載を考慮したはならない(70条3項)

(ロ)

特許法上の規定によれば、第1年から第3年までの各年分の特許料の納付がなくても 特許権の設定の登録がされる場合がある。

  • 免除の場合がありえる(108条1項) (66条2項)

(ハ)

甲が自己の特許権について、乙に対して専用実施権を設定し、その登録がされた後に、 乙が甲の承諾を得て丙に対してその専用実施権について通常実施権を許諾した。この場 合に、丙が、その通常実施権について質権を設定するためには、甲及び乙の承諾を得な ければならない。

  • 94条2項かっこ書きの規定通り。

(ニ)

甲が自己の特許権について、乙に対して通常実施権を許諾した後、乙が甲の承諾を得 て丙に対してその通常実施権について質権を設定した場合、丙がその質権を実行し、そ の通常実施権を丁に移転するためには、甲の承諾を得なければならない。

×

  • 通常実施権者乙が、特許権者甲に質権を設定する旨の承諾を得る(94条2項)ときに、質権の実行についても承諾を得ていると考えられるため、質権実行時に、再度承諾は不要となる。

(ホ)

請求項1及び請求項2に係る特許権を有する者甲が、その特許権の全部の範囲につい て、乙に対して専用実施権を設定し、その登録がされている場合、甲は乙の承諾を得た としても、請求項1に係る特許権のみを放棄することはできない。

×

  • 特許権者は、専用実施権者の承諾を得た場合に限り、その特許権を放棄することができる(97条1項)

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 4~6

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【特許・実用新案】4

特許要件及び特許出願に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、誤っているものは、いくつあるか。

(イ)

特許法第36 条の規定によれば、特許を受けようとする者が、願書に添付して特許庁長 官に提出しなければならないと規定された明細書には、「発明の名称」、「図面の簡単 な説明」、「発明の詳細な説明」及び「特許請求の範囲」を記載しなければならない。

×

  • 「特許請求の範囲」は記載する必要はない(36条3項)
  • 「特許請求の範囲」は、添付書面である(36条2項)

(ロ)

特許を受ける権利を有する甲の行為に起因して特許法第29 条第1項各号のいずれか に該当するに至った発明イがある場合に、その行為によってその発明イを知った乙がそ の発明イに対して改良を加えた発明ロを刊行物によって発表した。その後、その発明イ が特許法第29 条第1項各号のいずれかに該当するに至った日から3月後に甲がその発 明イについて特許出願をした。この場合、甲は、発明ロを発表したことについて新規性 の喪失の例外に関する特許法第30 条第2項の適用を受けられることがある。

×

まとめ

  • 30条の趣旨
    •  原則、公開された発明は特許を受けることができない。しかし、自らの発明を公開した後、その発明について一切特許を受けることができないとすると、発明者にとって酷な場合がある。
       そのため、新規性喪失の例外について規定した。
  • 自己の行為に起因する場合、30条1項が適用され、他者の行為に起因する場合、同条2項が適用される。
  • 特許を受ける権利を有する者の意に反する場合、30条1項が適用され、自身の行為に起因する場合、同条2項が適用される。
  • 30条2項の場合、同条3項の手続きが必要となる。
  • 特許を受ける権利を承継した者の出願についても適用される。
  • 先願の例外又は出願日の特例ではない。(商標法とは異なる。)
  • 自己の行為に起因する場合(青本 30条)
    • 自己の行為に基づいて他者により公開される場合も含む。
    • 特許を受ける権利を有する者の発明に他者が改良等を加えて公開した場合、当該他者が改良を加えた発明は、特許を受ける権利を有する者の行為に起因して新規性を喪失した発明には該当せず、30条2項の適用を受けることができない。
      • 特許を受ける権利を有する者の意に反して、他者が改良等を加えて公開した場合、30条1項の適用を受けることができるかもしれない。

解説

  • 発明ロを発表したことについて、甲の意に反するものである場合、30条2項の適用を受けることができない。
  • 甲の行為に起因するものである場合、発明ロは改良発明であるため、30条2項の適用を受けることができない。

(ハ)

特許を受ける権利を有する者の意に反して特許法第29 条第1項各号のいずれかに該 当するに至った発明は、その該当するに至った日から7月後にその者がした特許出願に 係る発明についての同項及び同条第2項の規定の適用について、同条第1項各号のいず れかに該当するに至らなかったものとみなされる場合はない。

×

  • 新規性喪失後、1年以内に手続きをしなければならない(H30年改正 30条1項、2項)

(ニ)

特許法第36 条第5項には、特許請求の範囲に、特許出願人が特許を受けようとする発 明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならないことが規定さ れており、当該規定に違反すると、同項に違反する旨の拒絶の理由が通知される。

×

  •  36条5項は、拒絶理由でない(49条各号)
     特許出願人の意思にかかわらず、審査官が適当かどうかを判断することは適当でないためである。
  • 36条4項1号、6項、37条は49条4号、36条4項2号は49条5号による拒絶理由。

(ホ)

外国語書面出願の出願人が、特許法第36 条の2第2項本文に規定する期間に、同項に 規定する外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文(以下、単に「翻訳文」 という。)の提出をせず、同条第3項による特許庁長官の通知を受けたが、同条第4項 に規定する期間内にも翻訳文を特許庁長官に提出しなかったために、当該外国語書面出 願は、同条第2項本文に規定する期間の経過の時に取り下げられたとみなされた。この 場合、当該出願人は、同条第2項本文に規定する期間内に翻訳文を提出することができ なかったことについて正当な理由があるときは、同条第6項に規定する期間内に限り、 翻訳文を特許庁長官に提出することができる。

×

  •  36条の2第4項に規定する期間に期間内に翻訳文を提出できなかったことについての正当理由があった場合、提出できる(36条の2第6項)
     36条の2第2項本文に規定する期間内ではない。
  • パリ条約による優先権主張に、在外者の特許管理人の特例における、特許管理人の選任の届け出の提出期間(184条の11第6項)
  • 規定通り
  • 提出命令通知(36条の2第3項)
  • 正当理由による追完(同条6項)

【特許・実用新案】5

特許異議の申立てに関し、次のうち、正しいものは、どれか。

特許異議の申立てをする者は、特別の事情があるときは、特許異議申立書に特許異議 申立人の氏名又は名称を記載することを省略することができる。

×

  • 規定なし。

特許庁長官は、特許異議の申立てをする者により特許異議申立書が提出されると、特 許異議申立書の副本を特許権者に送付しなければならない。

×

  • 送達しなければならない。
  •  審判長は、特許異議申立書の副本を特許権者に送付しなければならない(115条3項)
     特許庁長官が送付するわけではない。

特許異議の申立てに係る特許を取り消すべき旨の決定は、決定の謄本の送達により確 定する。

×

  • 取消決定については、決定の謄本送達後、30日以内に不服申し立てをすることができる(178条1項、3項)。その期間経過後、取消決定が確定する。

審判長は、特許異議の申立てに係る特許を取り消すべき旨の決定をしようとするとき は、参加人がいる場合、特許権者のみならず参加人に対しても、特許の取消しの理由を 通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。

  • 規定通り(120条の5第1項)

特許法には、特許異議の申立てをすることができる期間について、特許権の設定の登 録の日から6月以内に限る旨の規定がある。

×

  • 特許掲載公報の発行の日から6月以内(113条1項)特許権の設定の登録の日からではない。

【特許・実用新案】6

特許出願の分割及び実用新案登録に基づく特許出願に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正し いものは、いくつあるか。 ただし、特に文中に示した場合を除いて、特許出願は、外国語書面出願、国際出願に係 る特許出願、特許出願の分割に係る新たな特許出願、出願の変更に係る特許出願又は実用 新案登録に基づく特許出願ではなく、取下げ、放棄又は却下されておらず、査定又は審決 が確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる優先権の主張も伴わないもの とする。

(イ)

2以上の発明を包含する特許出願において、2以上の発明が特許法第37 条に規定する 発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当する場合であっても、特許出願人は、当 該特許出願の一部を分割して、1又は2以上の新たな特許出願にすることができる。

  • 単一性の要件(37条)は、分割出願をするための要件ではない。(意匠10条の2とは異なる。)

(ロ)

特許異議の申立ての審理において、特許の取消しの理由が通知され、相当の期間を指 定して意見書を提出する機会が与えられた場合、当該指定された期間内に、その特許の 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明の一部を1又は2以 上の新たな特許出願とすることができる旨が特許法に規定されている。

×

  • 分割出願できる時期(44条1項)に、取消理由通知における指定期間は含まれていない。

(ハ)

甲の実用新案登録に対し、請求人乙及び請求人丙の各人を請求人とする2件の実用新 案登録無効審判の請求があり、請求人乙の実用新案登録無効審判の請求について、期間 aを指定して答弁書を提出する機会が与えられた。その指定された期間aの経過後、請 求人丙の実用新案登録無効審判の請求について、期間bを指定して答弁書を提出する機 会が与えられた。この場合、甲は、その指定された期間b内に実用新案登録に基づいて 特許出願をすることができることがある。

×

  • 46条の2の出願ができる時期は、無効審判の答弁書提出のための最初の指定期間である(46条の2第1項4号)

(ニ)

甲は、特許請求の範囲に発明イが記載され、明細書及び図面には発明イ、ロ及びハが 記載された特許出願Aをした。その後、特許出願Aを分割して特許請求の範囲に発明ロ が記載され、明細書及び図面には発明イ及びロが記載された新たな特許出願Bをした。 さらに、甲は、特許出願Bを分割して特許請求の範囲に発明ハが記載され、明細書及び 図面には発明イ、ロ及びハが記載された新たな特許出願Cをした。この場合、特許出願 Cは、特許出願Aの時にしたものとみなされる。

×

特許審査基準 H27年9月改正 第VI 部 第1 章 第1 節 特許出願の分割の要件

5. 分割要件についての判断に係る留意事項

 出願人は、特許出願(親出願)を原出願として分割出願(子出願)をし、更に子出 願を原出願として分割出願(孫出願)をすることができる。
 この場合は、審査官は、以下の(i)から(iii)までの全ての条件を満たすときに、 孫出願を親出願の時にしたものとみなして審査をする。

  • (i) 子出願が親出願に対し分割要件の全てを満たすこと。
  • (ii) 孫出願が子出願に対し分割要件の全てを満たすこと。
  • (iii) 孫出願が親出願に対し分割要件のうちの実体的要件の全てを満たすこと。

 分割要件とは、実体的要件と形式的要件に分けられる。形式的要件とは、出願人適格と出願可能時期である。
 実体的要件とは、分割出願に記載された事項が、原出願の出願当初に記載された事項の範囲内かどうか等についてである。

  • 子出願に対応する出願Bの明細書及び図面には、発明イ及びロのみが記載されているにもかかわらず、孫出願に対応する出願Cの明細書及び図面には、発明イ、ロの他、ハも記載されている。そのため、孫出願が子出願に対し実体的要件が満たされておらず、分割要件の全てを満たしていない。そのため、分割出願の効果は得られず、特許出願Cは、特許出願Aのときにしたものとみなされない。
  • パリの優先権(パリ4条C(2))や、国内優先権(41条2項)のように、先の出願のみに適用される旨の規定はない。

(ホ)

甲は、特許請求の範囲に発明イが記載され、明細書及び図面には発明イ及びロが記載 された特許出願Aをし、特許出願Aの出願の日後、特許出願Aを分割して特許請求の範 囲、明細書及び図面に発明ロが記載された新たな特許出願Bをした。その後、拒絶の理 由が通知されることなく特許出願Bについて特許権の設定の登録がされたとき、この特 許権の存続期間は、特許出願Bの分割の日から20 年をもって終了する。ただし、特許権 の存続期間の延長登録の出願はないものとする。

×

  • 分割出願は、先の出願日にしたものとみなされる(44条2項)。そのため、出願Bの特許権の存続期間の起算日は、出願Aの出願日となる。
  • 国内優先権の主張の場合、優先権主張を伴う出願をした日が、存続期間の起算日となる(41条2項は、67条1項には適用されない)
  • パリの優先権の主張の場合も同じ(パリ4条の2(5))

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題 1~3

令和元年弁理士試験 短答式筆記試験問題

【特許・実用新案】1

特許出願についての拒絶査定不服審判又は特許法第162 条に規定する審査(いわゆる前 置審査)に関し、次の(イ)~(ニ)のうち、正しいものは、いくつあるか。

(イ)

拒絶査定不服審判において、審判官について審判の公正を妨げるべき事情があるとき でも、拒絶査定不服審判を請求する者が、忌避の申立を口頭をもってすることができる 場合はない。

×

  • 拒絶査定不服審判は、原則、書面審理(145条1項)
  • ただし、口頭をもってすることもできる(同項但し書き)
  • 審判官について、審判の公正を妨げるべき事情があるときは、忌避の申立てができる(141条1項)
  • 忌避の申立てをする者は、口頭審理においては、口頭をもってすることができる(142条1項)

(ロ)

拒絶査定不服審判の請求があった場合において、その請求と同時に実験成績証明書の 提出があったときは、その請求と同時にその請求に係る特許出願の願書に添付した明細 書、特許請求の範囲又は図面について補正がなくとも、特許庁長官は審査官にその請求 を審査させなければならない。

×

  • 補正があった場合は、前置審査(162条)。それ以外は、審判。

(ハ)

特許庁長官は、拒絶査定不服審判の請求があった全ての審判事件について、各審判事 件に審判書記官を指定しなければならない。

×

  • 前置審査(162条)で、特許査定となった場合(163条3項)、審判がはじまらない。そのため、審判書記官は指定されない(144条の2第1項)

(ニ)

拒絶査定不服審判の請求は、拒絶査定不服審判を請求した者に審決の謄本が送達され た後であっても、取り下げることができる場合がある。

  • 審決確定まで、審判請求を取り下げることができる。
  • 審決の謄本送達後、訴訟を提起する場合がある。
  • 訴訟を提起する期間経過後、審決が確定する。

【特許・実用新案】2

特許権又は実用新案権の侵害に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

特許権者は、故意又は過失により自己の特許権を侵害した者に対し、当該特許権の存 続期間中に限り、その侵害により自己が受けた損害の賠償を請求することができる。

×

  • 損害賠償請求(民709条)は、特許権存続期間満了後もできる。

特許権者は、過失により自己の特許権を侵害した者に対しその侵害により自己が受け た損害の賠償を請求する場合において、その侵害した者がその侵害の行為により利益を 受けていないときは、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額(以 下「実施料相当額」という。)を超える損害を受けていたとしても、実施料相当額を超 える賠償を請求することはできない。

×

  • 実施料相当額を超える賠償を請求することを妨げない(102条4項)

実用新案権者は、その登録実用新案に係る実用新案技術評価書を提示して警告をした 時から30 日を経過するまでの間は、自己の実用新案権を侵害する者又は侵害するおそれ がある者に対し、その権利を行使することができない。

×

- 警告直後から、権利行使可(実29条の2)

特許権の侵害に係る訴訟において、被告が、当該特許が特許無効審判により無効にさ れるべきものであるとの主張をした場合に、その主張が審理を不当に遅延させることを 目的として提出されたものと認められるときは、その主張が時機に後れたものでなくと も、裁判所は、職権で却下の決定をすることができる。

  • 時機に遅れたものといった条件は規定されていない(104条の3第1項、2項)

特許権の侵害に係る訴訟において、特許法第105 条の4に規定する秘密保持命令が発 せられた場合には、その命令は、命令が発せられた時から、効力を生ずる。

×

  • 秘密保持命令の謄本送達後から、効力発生(105条の4第4項)

【特許・実用新案】3

特許法及び実用新案法に規定する手続に関し、次のうち、正しいものは、どれか。 ただし、特に文中に示した場合を除いて、特許出願は、外国語書面出願、国際出願に係 る特許出願、特許出願の分割に係る新たな特許出願、出願の変更に係る特許出願又は実用 新案登録に基づく特許出願ではなく、取下げ、放棄又は却下されておらず、査定又は審決 が確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる優先権の主張も伴わないもの とする。 また、特に文中に示した場合を除いて、実用新案登録出願は、国際出願に係る実用新案 登録出願、実用新案登録出願の分割に係る新たな実用新案登録出願、出願の変更に係る実 用新案登録出願ではなく、実用新案登録に基づく特許出願がされておらず、取下げ、放棄 又は却下されておらず、審決が確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる 優先権の主張も伴わないものとする。 さらに、以下において、「最後の拒絶理由通知」とは、特許法第17 条の2第1項第3号 に規定する「最後に受けた」拒絶理由通知をいうものとする。

甲の実用新案登録Aに対して、他人から実用新案技術評価の請求がなされたが、甲は、 当該実用新案技術評価書の謄本の送達があった日から2月を経過するまでに訂正を行わ なかった。当該実用新案技術評価書の謄本の送達があった日から1 年後、甲の当該実用 新案登録Aに対して、実用新案登録無効審判が請求された。この実用新案登録無効審判 について、実用新案法第39 条第1 項に規定された答弁書の提出のために最初に指定され た期間内であれば、甲は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とする訂正をすること ができる。

×

  • 実14条の2第1項訂正を行える期間は、各号の一回のみ。

特許庁長官は、特許出願人の氏名又は名称の記載がない特許出願について、不適法な 手続であって、その補正をすることができないものであるとして、手続をした者に対し、 その理由を通知し、相当の期間を指定して、弁明を記載した書面を提出する機会を与え た後、その特許出願を却下することがある。

×

  • 出願を取り下げたものとする(18条の2)
  • 氏名又は名称の記載がない特許出願には、補完命令がされる(38条の2第2項)
  • 補完がされない場合、出願却下することができる(同条8項)
  • ここで、補完と同時に、又はその後、不適法は手続きである補正をしたとして、その補正をすることができないものであるとして、理由通知、期間指定、弁明書の提出機会付与後、その補正が却下される(18条の2)。その特許出願が却下されるわけではない。

出願人は、最後の拒絶理由通知において指定された期間内に、明細書のみについて補 正するとともに意見書を提出した。これに対し、当該補正が特許法第17 条の2第3項の 要件(いわゆる新規事項の追加の禁止)を満たしているものの、当該補正及び意見書に よって最後の拒絶理由通知に係る拒絶の理由が解消されていないと審査官が認めた場合、 この補正は却下される。

×

  • 最後の拒絶理由通知における指定期間では、特許請求の範囲について、補正の制約がある(17条の2第5項)。明細書については、17条の2第3項のみが制約となる。
  • 拒絶理由が解消されない場合、補正却下(53条1項)
  • 拒絶理由は通知されず(50条但し書き)、最後の拒絶理由通知における拒絶理由により、拒絶査定(49条、52条)

  • 17条の2第3項を満たしているため、補正却下の対象ではない(53条1項)、補正却下されない。

    特許審査基準 H27年9月改正 第I部 第2章 第6節 補正の却下の決定

    4.補正を却下する場合の出願の取扱い

     補正を却下すると、出願は補正書が提出される前の状態に戻る。

    (1)

     審査官は、「最後の拒絶理由通知」で指摘した拒絶理由が適切であって、その拒絶理由が解消されていないと認められる場合は、補正の却下の決定をした上で、拒絶査定をする。

    5.補正を却下しない場合の出願の取扱い

    (2)

     審査官は、補正後の出願について、拒絶理由が解消されていないと判断した場合は、拒絶査定をする。

所感

  • 補正後の拒絶査定は、全て補正却下後にされるものだと思っていた。

出願人は、特許法第29 条第2項のいわゆる進歩性の規定に違反することのみを理由と する最後の拒絶理由通知を受け、指定された期間内に請求項の削除のみを目的とする補 正をするとともに意見書を提出した。これに対し、当該補正及び意見書によって最後の 拒絶理由通知に係る拒絶の理由が解消されていないと審査官が認めた場合、この補正は 却下されず、拒絶をすべき旨の査定がされる。

×

  • 最後の拒絶理由を受け(17条の2第1項3号)、審査官が拒絶理由解消していないと認めた場合、補正却下(53条1項)間違え。
  • 拒絶の理由が解消されていないことから、進歩性(29条2項)違反により、独立特許要件(17条の2第6項で準用する126条7項)を満たしていないことが、補正却下理由。
  • 最後の拒絶理由通知(17条の2第1項3号)を受け、請求項の削除を目的とする補正(同条5項1項)を行う。
  • 本補正は、補正却下(53条1項)の対象である17条の2第3項から6項に該当しない。そのため、補正却下されない。
  • よって、この補正は却下されず、拒絶をするべき旨の査定がされる。
  • 特許請求の範囲の限定的減縮(17条の2第5項2号)を目的とする補正を行い、拒絶理由が解消されていないと認められた場合、補正却下の対象(53条1項、17条の2第6項で準用する126条7項)となるため、補正却下され、拒絶査定となる。

実用新案法には、訂正要件として、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とする訂正 をする場合、訂正後における実用新案登録請求の範囲に記載されている事項により特定 される考案が実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるもの でなければならない旨が規定されている。

  • 実用新案では、独立特許要件のような規定はない。実質的な審査がないためである。