平成29年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [特許・実用新案]

【問題Ⅰ】

 日本国内に居住する甲は、平成28 年5月1日に、日本国において発明イについての英語 による外国語書面出願Aをした。その後、弁理士乙は、甲から、出願Aを基礎としてパリ 条約による優先権を主張しつつ、出願Aの明細書に実施例を追加して、日本国を除くパリ 条約の同盟国に発明イについての出願をする手続の依頼を受けた。そこで、乙は、これら の国へパリ条約による優先権の主張を伴った出願をするために、英文明細書の作成を進め ていたところ、平成29 年4月28 日に、甲から、出願Aの明細書にさらに別の実施例を追 加して、日本国に、出願Aを基礎とする優先権の主張を伴う英語による出願Bをする手続 の依頼を受けた。
 以上を前提に、以下の各設問に、答えよ。

 出願Bを外国語書面出願とした場合において、以下の設問について、答えよ。

(1)

 外国語書面出願の制度の概要及び趣旨について、説明せよ。

解答例

1 概要

 外国語書面出願制度とは、出願人が明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書に代えて、外国語で記載し た外国語書面及び外国語要約書面を願書に添付して出願することができる制度である(第36 条の2 第1 項)。

2 趣旨

 外国人が我が国に特許出願をする場合は、外国語によりなされた第一国出願 に基づきパリ条約による優先権を主張して出願することが多い。日本語による 出願しか認められないものとすると、パリ条約による優先権の主張ができる期 間が満了する直前に特許出願をせざるを得ない場合は、短期間に翻訳文を作成 する必要が生じる。
 また、願書に最初に添付した明細書等に記載されていない 事項を補正により追加することは認められないため、第一国出願を日本語に翻 訳して特許出願した場合は、外国語を日本語に翻訳する過程で誤訳があったと きに外国語による記載内容をもとにその誤訳を訂正することができないなど、 発明の適切な保護が図れない場合がある。
 外国語書面出願制度は、こうした問題点を解決するために設けられたもので ある。

所感

  • 特許・実用新案審査基準 第VII部 外国語書面出願制度の概要をそのまま記載。
  • パリ条約による優先権の主張ができる期間が満了する直前に特許出願をせざるを得ない場合とは、どんな場合かわからない。