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H30 論文 特許
設問 2
下記の相談を受けた弁理士Aの立場から、設問に記載された事実のみを前提として、以 下の各設問に答えよ。 ただし、設問中の特許権P及びQについて無効理由は考慮する必要はない。
(4)【平成30 年6月上旬 甲からの相談④】
弁理士Aは、甲から特許権Qの侵害について相談を受けた。
甲によれば、「丁の所在が判明し、乙及び丁から特許権Qを買い受け、移転登録も完了
した。そこで、新製品Xの製造販売を開始したところ、当初、売り上げは順調だったが、
その後、売り上げが減少した。調査により、戊が新製品Xと同一の構成を有する釣り竿で
ある製品Yを国内で製造販売していることが判明したので、戊に対して特許権Qの侵害に
基づく損害賠償請求の訴訟をしたいが、新製品Xの利益の額は戊に知られたくない。」と
のことであった。
甲の採り得る損害額の算定方法について、特許法上の規定に沿って述べるとともに、そ
れが甲の「新製品Xの利益の額は戊に知られたくない」との意向にかなうか否かについて、
簡潔に説明せよ。
解答例
1. 102条1項
戊のYの譲渡数量に、甲が戊の侵害行為がなければ販売することができたXの単位数量当たりの利益の額を乗じた額を、甲の実施の能力に応じた額を超えない限度において 損害額とみなすことができる。
この場合、新製品Xの利益の額を提示する必要があるため、甲の意向に沿わない。
2. 102条2項
戊の利益の額を損害額と推定することができる。
この場合、新製品Xの利益の額を提示する必要がないため、甲の意向に沿う。
3. 102条3項
甲が特許権Qの実施に対して受けるべき金銭の額に相当する額を侵害額とすることができる。
この場合、新製品Xの利益の額を提示する必要がないため、甲の意向に沿う。