H30 論文 特許

設問 2

下記の相談を受けた弁理士Aの立場から、設問に記載された事実のみを前提として、以 下の各設問に答えよ。 ただし、設問中の特許権P及びQについて無効理由は考慮する必要はない。

(3)【平成29 年10 月下旬 甲からの相談③】

 弁理士Aは、甲から特許権Qの譲渡について再度相談を受けた。 甲によれば、「乙から特許権Qの譲渡を受けることになったが、乙の特許権Qには、共 有者丁が存在し、それぞれの持分は乙が10 分の9、丁が10 分の1 である。また、丁は乙 の元役員であったが、現在音信不通である。」とのことであった。
 また、甲によれば、「乙は、(ホ)特許法によれば、特許権が共有であっても、各特許権者 は、当然に当該特許権の特許発明を自由に実施することができる。(ヘ)乙は特許権Qの過 半数の持分を有しているから、乙の持分は乙の意思のみで譲渡できると説明している。」 とのことであった。
 乙の説明(ホ)及び(ヘ)が正しいか否か、理由を付して、それぞれ分けて説明せよ。

解答例

設問(ホ)について

 特許権が共有に係るときは、各共有者は、特段の取り決めがない場合契約で別段の定めをした場合を除き、他の共有者の同意を得ないで、その特許発明を実施することができる(73条1項)
 設問から契約で別段の定めをした事実は認定できない。
 そのため、乙は当然当該特許権の特許発明を自由に実施することができるため、乙の説明は正しい。

設問(へ)について

 特許権が共有に係るときは、他の共有者の承諾を得なければ、 同意を得なければその持ち分を譲渡することができない(73条2項)。譲受人の技術力によっては、特許権の価値が変動するためである。  設問より、特許権Qは乙と丁の共有に係るものである。乙がその持ち分を譲渡する場合、丁の同意を得なければならない。
 そのため、乙の説明は正しくない。