H30 論文 特許

設問1(3)

日本国籍を有し日本国内に居住する甲は、平成29 年5月1日に、願書に添付した明 細書及び図面に自らした発明イ及びロを記載するとともに、特許請求の範囲に発明イを 記載して、日本国において特許出願Aをした。

甲は、平成30 年2月1日に、出願Aについて、拒絶をすべき旨の査定の謄本の送達 を受け、同年3月1日に、発明ロを明細書、特許請求の範囲及び図面に記載して、特許 法第44 条第1項の規定による新たな特許出願Cをした。 その後、出願Aは、出願公開されることなく拒絶をすべき旨の査定が確定した。また、 出願Cは、出願公開された。 丙が、平成29 年7月1日に、自らした発明ロを明細書、特許請求の範囲及び図面に 記載して、日本国において特許出願Dをした場合、出願Dが、特許法第29 条の2の規 定により拒絶されることはあるか、説明せよ。

解答例

  1. 出願Aは出願公開されず、また拒絶査定が確定しているため特許掲載公報 (66条3項) にも掲載されない。したがって、出願Dは、出願Aを引用例として29条の2の規定により拒絶されることはない。
  2. 出願Cは、出願Aの分割出願のため、出願Aの出願日にしたものとみなされる(44条2項本文)が、29条の2の規定の適用については、出願日は遡及されず(同条ただし書き)、Cの出願日を基準に判断される。したがって、Dは、Dの出願日後に出願されたCを引用例として29条の2の規定により拒絶されることはない。
  3. よって、出願Dは、29条の2の規定により拒絶されることはない。

所感

  • 29条の2の規定に特許掲載公報(66条3項)が含まれていることを覚えていなかった。
  • 29条の2に限らず、規定の適用を受けない場合は、しない要件のみに着目することで、短く記載することが可能である。逆に、規定の適用を受ける場合は、すべての項目を記載しなければならないため、記載量が多くなる。