H30 論文 特許

設問1(2)

日本国籍を有し日本国内に居住する甲は、平成29 年5月1日に、願書に添付した明 細書及び図面に自らした発明イ及びロを記載するとともに、特許請求の範囲に発明イを 記載して、日本国において特許出願Aをした。

出願Aは外国語書面出願であった。 乙会社は、平成29 年7月に独自に装置αの開発を開始し、平成29 年12 月に当該装 置αの製造及び販売を日本国内において開始した。当該製造及び販売は、発明イの実施 に該当する。 甲は、平成30 年1月にこの事実を知り、乙に対して、発明イに係る特許権の設定の 登録があった後に、発明イの実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金員の支払 いを請求するために、当該特許権の設定の登録前に警告をしようと考えた。 この場合、当該警告を可能な限り早期に行うために、甲がとるべき特許法上の手続は どのようなものか、乙に対する警告の方法もあわせて説明せよ。

解答例

1 甲がとるべき特許法上の手続き

1 外国語書面の翻訳文(36条の2第2項)の提出

出願Aは外国語書面出願(36条の2第1項)である。後述する出願公開の請求をするために(64条の2第1項柱書)、甲は外国語書面出願の外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出するべきである(同条第1項3号)

翻訳文提出(36条の2第1項)は、出願公開(64条)の要件ではなく、出願公開の請求(64条の2第1項柱書)の要件である。

2 出願公開の請求

後述する警告をするために、甲は特許庁長官に出願Aについて出願公開の請求をするべきである(64条の2第1項)

2 乙に対する警告の方法

甲は出願Aの公開後、特許出願に係る発明の内容を記載した書面により乙に警告しなければならない(65条1項)。また、警告の方法として新聞等に掲載するのではなく、具体的に乙を特定し行わなければならい。