平成28年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [商標]
平成28年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [商標]
【問題Ⅰ】
商標法第6条第2項に規定される「商品及び役務の区分」、並びに指定商品及び指定役
務に関して、以下の設問に答えよ。
【35点】
(1)
「商品及び役務の区分」について簡潔に述べ、さらに、商品及び役務の類似の範囲との関係を説明せよ。
解答例
1. 「商品及び役務の区分」
商品及び役務の指定(6条1項)
は、政令で定める区分に従ってしなければならない(同条2項)
。区分分けすることにより、一出願につき多区分に渡る商品及び役務を指定できる。そうすることで、出願人にとっては、区分毎に願書を作成る必要がなくなり、手続きの簡素化が図られ、商標権の管理及び調査が容易になるという利点がある。
2. 商品及び役務の類似の範囲との関係
6条2項で規定する、政令で定める商品及び役務の区分と商品又は役務の類似範囲は別のものである。それを明示するために、6条3項として規定されている。
(2)
指定商品及び指定役務について、出願時、審査・審判時、登録後のそれぞれにおける 条文上の取扱いを列挙し、簡潔に説明せよ。
1. 出願時
商標登録出願 5条
指定商品及び指定役務は、願書の記載事項である(5条1項3号)
。当該記載がない場合(5条の2第1項4号)
、特許庁長官は、補完を命令じなければならない(同条2項)
。
2. 審査・審判時
(1) 一商標一出願 6条
商標登録出願は、一商標ごとに、商品又は役務を指定しなければならない‘‘(6条1甲)‘‘。一商標一出願の原則を定めたものである。
6条1項、2項は、拒絶理由となる(15条3号)
。
(2) 分割 10条1項、補正 68条の40
審査・審判に継続している場合、二以上の商品又は役務を指定商品又は指定役務とする商標登録出願の一部を新たな商標登録出願とすることができる(10条1項)
。また、指定商品又は指定役務を削除補正することができる(68条の40)
。複数の商品又は役務を指定した場合、一部の商品又は役務について拒絶、無効の理由があるとき、他の拒絶、無効理由のない商品又は役務について救済するためである。
(3) 審判などの請求
登録異議の申立て(43条の2柱書)
、商標登録無効審判(46条1項柱書)
、不使用取消し審判(50条1項)
は、指定商品又は指定役務ごとに請求することができる。
3. 登録後
(1) 商標権の分割、移転 (24条、24条の2)
商標権の分割は、指定商品又は指定役務ごとにすることができる(24条1項)
。また、商標権の移転は、指定商品又は指定役務ごとに分割してすることができる(24条の2第1項)
。
(2) 登録料 40条
商標権の登録を受ける者は、登録料として、指定商品又は指定役務の区分の数を乗じて得た額を納付しなければならない(40条1項)
。また、商標権の存続期間の更新登録の申請をする者は、登録料として指定商品又は指定役務の区分の数を乗じて得た額を納付しなければならない。
(3) 補正 68条の40
更新登録の登録料納付と同時に、指定商品及び指定役務の区分を減じる補正をすることができる。
(4) 指定商品又は指定役務がニ以上の商標権についての特則‘‘(69条)‘‘
所定の規定の適用については、指定商品又は指定役務ごとに商標登録がされ、又は商標権があるものとみなされる。