平成29年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [商標]
平成29年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [商標]
【問題Ⅰ】
商標登録の異議申立制度と無効審判制度の異なる点について、説明せよ。
ただし、解答に際してはマドリッド協定の議定書に基づく特例は、考慮しなくてよい。
【35点】
解答例
1.趣旨
異議申し立て制度は、商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために設けられた。また、無効審判制度は、特許庁が行った登録処分の是非を巡る当事者間の争いを解決することを目的として設けられた。
2. 申立人、請求人
異議申し立ての場合、何人も請求することができる(43条の2第1項)
。それに対し、無効審判は、利害関係人のみ請求することができる(46条1項)
。
3. 申立て理由、請求理由
無効理由として、権利帰属の無効理由(46条1項4号)
、後発的無効理由(46条1項5号、6号、7号)
がある。
本理由は、異議申立て理由とされていない。権利帰属の無効理由は、当事者間の紛争解決手段として規定されているためである。後発的無効理由は、登録後に生じた事由のため、異議申立て理由とすることは適当でく、また、申立可能期間にこのような事由が発生することも事実上極めて稀と考えられるためである。
4. 申立て・請求時期
異議申し立ては、商標掲載公報の発行の日から2月以内に限り、することができる(43条の2第1項柱書)
。また、無効審判は、原則、商標の設定登録日から存続期間満了のときまですることができる。例外として、除斥期間経過後は、請求することができない(47条)
。また、商標権が消滅した後もすることができる(46条3項)
。商標権を侵害した場合の損害賠償請求(民709条)
に対抗するためである。
参考
1. 申立て理由、請求理由
対象となる商標登録が旧国際登録に係る商標権の再出願に係る商標登録であって、もとの国際登録に係る商標登録について登録異議の申立てがされることなく43条の2第1項の期間を経過した場合、当該商標について異議申し立てをすることができない(68条の37)
。なぜならば、実体的審査を必要としないためである。
対象となる商標登録が国際登録の取消し後の商標登録出願(68条の32)
、又は議定書の廃棄後の商標登録出願(68条の33)
である場合、無効理由として、68条の32第1項、68条の33第1項、68条の32第2項各号、及び68条の33で準用する68条の32第2項各号が追加される。
また、旧国際登録に係る商標権の再出願に係る商標登録について、除斥期間の起算日はもとの国際登録日となる(68条の39)
。
所感
- 異なる点を列挙すると、意外とある。
- 商標の論文試験で、半分、特許の内容を聞いてきているような気がする。