平成28年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [特許・実用新案]

平成28年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [特許・実用新案]

【問題Ⅰ】

(1)

特許協力条約における国際出願制度が設けられた趣旨について効果に言及しつつ簡 潔に、説明せよ。

解答例1

 他の国へ出願する場合、パリ条約に基づき出願を行う。しかし、複数の国に出願する場合、国ごとに出願の方式が異なるために、手続きが煩雑になること、また、翻訳文を作成することにより、出願日が遅れるといった問題がある。
 そこで、出願の方式を統一し、多国間へ出願する際の手間及び費用を削減するため、特許協力条約(PCT)における国際出願制度が設けられた。
 国際出願することにより、一度の出願で多数の国に対する出願日が認められることPCT11条(1)、や国際調査PCT及び国際予備調査()により、各国の官庁で行われる審査の負担の軽減がされる。

解答例2

 特許権は、属地主義(パリ4条の2)*のもと、各国の特許法に基づいて付与される。したがって、国ごとに特許出願を行うことが原則である。
 しかし、国ごとに特許出願をすることは煩雑であり、同日に異なる言語を用いて出願書類を提出することは、非常に困難である。
 そこで、ひとつの出願書類を提出することにより、複数の国に同時に出願したことと同じ効果を得られる制度として、特許協力条約(PCT)における国際出願制度が設けられた。
 PCT国際出願により、一度の出願で、すべてのPCT加盟国に対して「国内出願」をしたことと同じ扱いとなる(PCT11条(4))
 また、国際調査(PCT15条)、及び国際予備審査5(PCT33条)**)を受けることにより、出願人が特許取得の可能 性を精査し、厳選した国においてのみ手続を係属させ、費用の効率化、適正化を図ることができる。

所感

  • 解答1は、出願統一条約といった名をもとに、文章を作成。
  • 解答2は、平成28年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト、PCT 国際出願制度の概要 -特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の仕組み-のp7を参考に編集した。